2017年に「原点回帰」のゲームが増えた理由とゲーム業界の今後

昨日ゼルダの伝説BotWの記事をまとめたが、同作はゼルダの基本に立ち返った「原点回帰」のゲームであった。この「原点回帰」をテーマにした作品が昨今増えている。その理由について考察したい。

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「原点回帰」のゲーム一覧

発表・発売されたゲームで「原点回帰」をテーマにしたと思われるゲームは下記の通り。

  • ゼルダの伝説ブレス オブ ザ ワイルド
  • バイオハザード7
  • ドラゴンクエストXI
  • Call of Duty:WWII
  • PROJECT Re FANTASY(アトラス新作RPG)
  • モンスターハンター:ワールド

多くの有名タイトルが原点回帰をテーマにしていることが分かる。これは偶然ではなく、ゲーム開発を取り巻く環境の変化が理由だと考えられる。

ゲーム開発環境の変化

PS3発売まで

PS3が発売される2006年までのゲームの進化はグラフィック映画性の進化の歴史である。ゲームは美しい映像、重厚な物語を描く方向にシフトしている。その流れを汲む代表的なタイトルは「FF」「MGS」「バイオハザード」「龍が如く」などのシリーズ。かつて音声すら入らなかったゲームは登場するキャラクターが喋るのが当たり前となり、映画のような演出、ゲーム画面とは思えないグラフィックを売りにするようになった。

DS、Wiiの超ヒット

その流れに一石を投じたのが任天堂から発売されたハードDSWiiである。両機種は「脳トレ」「Wii Fit」といったタイトルで非ゲーマー層の顧客を獲得することに成功した。しかしゲーム開発者にはこれが災いとなって降りかかる。ゲーム開発のリソースが売れているDS、Wiiといったハード向けタイトルに割かれることになったのである。無論これらのハードはスペック的に次世代機に大きく劣るためコアゲーマーには満足できない続編、シリーズ作品が生み出された。そしてWii、DSのユーザー層は元々ゲーマーではない層で構成されているため、そういったシリーズ作品には見向きもしなかった。その結果、任天堂ハードでは任天堂作品しか売れないという定説まで作られた。

PS3のハード構造がもたらした悲劇

一方のPS3はその特殊なハード構造が開発者を悩ませていた。PS3は高いポテンシャルを秘めているもののアーキテクチャの複雑さ、CPUのCELLの取っ付きにくさ、メモリ・GPUの貧弱さから開発は困難を極めた。MGS4の開発費は60億円を超え、中小メーカーやインディーズメーカーなどはPS3向けにタイトルを開発すること自体不可能だった。そして同世代のライバル機であるXbox 360はPCに似た構造だったためPS3からの移植も困難であり、各メーカーはこの問題を解決するために全ハードを同時に開発可能なゲームエンジンの開発に取り掛かる。

開発エンジン競争

カプコンでは「MT Framework」スクエニでは「クリスタル・ツールズ」コナミでは「Foxエンジン」などが作られる。これら開発エンジンも当然莫大な開発費を伴っていた。一方で海外ではUnityEpicといったゲームエンジンを専門に取り扱う企業も現れ始める。

ソーシャルゲームの大ヒット

そんな最中「パズドラ」「モンスト」といったソーシャルゲームが大ヒットする。当然利益を追い求めるゲームメーカーもソーシャルゲームを作り、既存IPのソーシャルゲームへの使い回しや安直なモバイル移植が多く見られた。ソーシャル黎明期のソーシャルゲームはハードスペックの低さも相まり、ゲーム性は殆ど存在しない数値比較の作業ゲーがほとんどであった。この時期にゲーマーがソーシャルゲームを毛嫌いしていた理由はゲーム性の低さも一因である。

オープンワールドの台頭


海外ではハードスペックの進化に伴いゲームのオープンワールド化が進む。TES、GTA、Falloutといったオープンワールドの名作が多く誕生した。この時代の世界の最先端のゲーム体験は「オープンワールド」となっていたが、国内メーカーは上記のDS, Wii, ソシャゲヒットの後追いをしていたためオープンワールド競争に乗り遅れることになる。

Wii U, 3DSの発売

2011年、2012年に発売されたWii U3DSは上記のオープンワールド化の流れに逆行するハードスペックだった。海外メーカーは完全にこれらの機種を見捨てて、次世代機向けのリッチなゲーム開発の方向にひた走る。

PS4の発売

満を持して発売されたPS4はゲーム開発者にとって救世主とも呼べるゲーム機であった。SCE(現SIE)はインディー向けタイトルの開発環境の強化の声明を発表し、開発環境の無償提供を開始した。これはPS3時代に開発者を置いてけぼりにした二の鉄を踏まないための方針であった。PS4発表当時の参入表明企業数は149社と多くの開発会社がPS4向けにゲーム開発を開始した。

開発エンジン戦争の終結

各メーカーで行われていたゲーム開発エンジン競争も鎮火した。多くの企業が餅は餅屋にの精神で「Unreal Engine」「Unity」といったエンジンや各種ミドルウェアを利用するようになった。例えばドラゴンクエスト、キングダムハーツ最新作はUnreal Engineで開発されており、ゼルダの伝説BotWの物理エンジンはHavokが導入されている。

ニンテンドースイッチの発売

任天堂から発売された新機種「ニンテンドースイッチ」は携帯ゲーム機でありながら、据え置き機と同等のハードスペックを備えた機種であった。今回のE3の発表でも新作ポケモンはスイッチ向けに発売することが発表されるなど任天堂タイトルはスイッチ向けに開発リソースとタイトルを集約させる流れとなっている。

開発者がゲームづくりに専念できる時代に

こうした変遷を経てようやくゲーム開発者が本来のゲームづくりに専念できる時代が来たと言える。Unityなどはゲーム開発の民主化を掲げており、個人でもゲームが開発できる時代が到来している。オープンワールド化演出の追求といった流れもようやく落ち着きが見えてきた。インディーゲームの中には時代に逆行したレトロゲームリスペクトなゲームも多く見られる。

今までの「今の技術ならこんなことが出来る」といった技術先行なゲーム内容ではなく、実現したいシステム表現のためにエンジン、ミドルウェアを選んで利用するという思考にシフトしている。そんな今だからこそゲーム開発者は一度立ち止まって原点回帰し、ゲームの面白さとは何か再確認しているのだと思う。

ゲームの未来は明るい

VRといった新しい体験も加わり、開発者がゲーム作りに専念できるよになった現在、ゲームの未来は明るいと言える。足かせとなる技術的制約、ハード的制約は改善されている。大きな制約があるとするとすれば企業体質だろう。2017年現在でも目先の利益を求めてソーシャルゲームに力を入れている企業も世の中には存在する一方で独立してゲームエンジンを借りて職人気質なゲーム作りを始めた企業も存在する。

これからのゲームは映像ゲームにはならず、純粋にゲームとして楽しめるゲーム性の高い作品が増えると思う。eスポーツも正式にオリンピック競技として採用され、ゲーム人口が大きく増えた未来が来ると信じている。

業界・環境の変化も嬉しいが何より大作ラッシュが夏、秋と続く時代になったことがとても嬉しい。本当にゲーマーにとって良い時代、ゲームにとって良い流れとなっている。この調子でゲーム界隈が盛り上がっていけばとても嬉しい。これからも数多くのゲームが出るのを楽しみにしたい。

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コメント

  1. 通りすがり より:

    KH3は元々ルミナスエンジンで開発していてその後アンリアルエンジン4に会社の方針で変わったそうですね。その際は巻き戻しの作業があったりして大変だったようですが。現在は順調なようです。

    • タコッケー タコッケー より:

      通りすがりさま、再びのコメントありがとうございます。
      らしいですね。
      『人喰いの大鷲トリコ』も開発途中で機種が変わり技術問題に苦しんだと聞きます。
      開発中のエンジン変更に掛かる労力は想像できませんね。
      アンリアル自体はDQではローディングの長さが課題だったようですが、Epicとも共同で問題解決したと聞きます。
      DQでの実績もありますし社内での情報共有もできそうなので、今後の開発は順調に進みそうですね。
      来年の発売が楽しみですね。
      情報ありがとうございました。