反論：台所スポンジが大便並みに不潔というのは大嘘【殆どは常在菌】

先日「台所用スポンジは大便並みに不潔　消毒すればするほど病原菌が大繁殖」とかいう記事を見かけてどう考えても嘘としか思えなかったので内容を確認してみる。

1 概要
2 J-CASTについて
3 ソースについて
4 問題点
5 無駄に不安を煽る週刊誌記事
6 鵜呑みにせずソースを確認

概要

元々はJ-CASTニュースの「ゲッ！台所用スポンジは大便並みに不潔　消毒すればするほど病原菌が大繁殖」という記事。

この内容を元に2chにスレッドが立てられ「痛いニュース」などの2chまとめに転載されて大きく話題となっている。

しかし、実生活で考えても汚いと感じることはまず無く疑わしい主張だと思ったので内容を検証してみる。

J-CASTについて

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— 週刊朝日 (@wasahisns) August 1, 2017

まず情報発信元のJ-CASTニュースについてだが、このニュースサイトの編集長は大森千明で『週刊朝日』の元編集長だった人物である。つまり上記記事は週刊誌の１ページに載っているようなネタという先入観を持つべきである。

J-CASTはそもそも「2ちゃんねる」や「ブログ」をニュースソースとして記事を書いており、”ゴミカスのようなメディア”という意味で「Jカス」「炎上メディア」などと呼ばれているサイトである。過去の炎上メディア問題についてはWikipediaを確認して欲しい。

そのため今回の記事タイトルと不安を煽る内容も炎上させてアクセス数を稼ぐための手法だと考えられる。

ソースについて

ソースは科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された論文

Microbiome analysis and confocal microscopy of used kitchen sponges reveal massive colonization by Acinetobacter, Moraxella and Chryseobacterium species（要約：使用済み台所スポンジのコロニー形成について）

となっている。

こちらは科学雑誌として有名なNature誌によって管理されている雑誌なので一次研究論文として信用できる。しかし論文内容とJ-CASTが伝えているニュース内容には隔たりがある。

問題点

検出されている殆どは常在菌

まず前提として「菌＝悪」ではない。人の身体の表皮にも「菌」が数百種類、百兆個存在すると言われている。しかしそれら多くの菌は身体に害を及ぼさない「常在菌」と言われる菌である。それに対して害を与える菌が「病原菌」と呼ばれる。

そして論文で最も検出されている菌は常在菌である「モラクセラ属」の最近となっている。

The most abundant families were Moraxellaceae

Microbiome analysis of used kitchen #sponges:massive colonization Acinetobacter, Moraxella & Chryseobacterium specie https://t.co/83mHV48hvV pic.twitter.com/LO0PBJORDW

— W A Höch (@MacBerry) August 1, 2017

画像で言うところのFamilyの茶色い部分は無害な「モラクセラ属」となっている。一般的に食中毒の原因となる「サルモネラ」や「カンピロバクター」などは検出されていない。

研究の主張としてもサンプルから計算した相対存在量が腸内細菌の割合に近づくと予想されるという結論に留まっている。

研究対象の母数が少なすぎる

そもそも研究の信憑性についても疑問である。対象として調査したスポンジの数はたったの14個である。理系出身の方や統計学を学んだ方には分かる通り「小学生の自由研究」レベルで少なすぎる。こんな精度の論文がNature誌管轄の「Scientific Reports」に載っているのも正直驚きである。