川崎市が無償でボードゲーム制作者を募集している件について批判が集まっているので、擁護する形で反論をまとめてみる。
概要
【メンバー募集!】「川崎景観ボードゲーム制作プロジェクト」始動!「難しいなぁ…」と思われがちな景観について、「楽しみながら学べる景観」を目指し、景観オリジナルボードゲーム制作決定!一緒にボードゲームを考えてくれる検討メンバー募集!
https://t.co/kilx1ape6j pic.twitter.com/wDmiJWV3Hc— 川崎市の景観まちづくり (@KWSK_Townscape) September 28, 2017
事の発端は川崎市が下記の内容で「ボードゲーム制作検討メンバー」を募集したこと。
- 募集対象:18歳以上でボードゲーム、景観、まちづくり、教育等に関心がある方
- 定員:10名程度
- 報酬:無報酬(交通費も自己負担)
そして同URLで記載されているQ&Aの内容にも疑問が広がった。
- Q:作ったボードゲームはどうなるの?
- A:川崎市内のこども文化センターなどへ配布し、市内の子どもたちが自由にあそべるような環境を作る予定です。
- Q:制作したボードゲーム等の著作権は?
- A:川崎市に帰属します。
SNSの反応
10月2日より募集が始まった上記内容に対してネット上では炎上記事が拡散。Twitterでの反応は以下の通り。
川崎市が「無償で」ボードゲーム制作者を募集
ボドゲ愛好家の1人として、これはちょっと・・・と思う。
ゲームのアイデアってそんなに簡単にでるものではないよ。
本当にボランティアで、っていう人が手を挙げる人もあることはあるけど。#クロス— ばーど(t.s) (@amateur_bird) October 5, 2017
川崎市のボードゲームの件、無償で配るからタダでやってよ、なんだろうけど無償で配るのは依頼主のかってであり物を作るのにはお金かかるんだよ、よくある話なんだけどボランティアするからお前らもボランティアでタダにしろってのは間違いだと思う。
— みぐ@獣大好き (@migumaru) October 6, 2017
労働基準監督署の見解を聴きたいな、川崎の完全無償でボードゲーム製作者募集#クロス
— Ponta Gon (@orz_pon) October 5, 2017
炎上している川崎市のボードゲーム制作者募集要項見たけど、たったこれだけの時間でゼロからゲームを作るのは無理だと思うよ…。
— 怪盗エスプレッソ@低浮上中 (@pht_espresso) October 5, 2017
反論
批判的な意見が多数集まり炎上状態となっているが正直言ってどれも企画を「勘違い」した的外れな意見が多い。
飽くまで「ワークショップ」
プロに無償奉仕を求める案件じゃなくて、交通費のみで参加できる体験型ワークショップっぽい。これを機にゲームデザインに興味を持つ人が増えたらよいね / “川崎市:ボードゲームを活用した景観まちづくりの取り組み” https://t.co/97UsaMC3Gk
— ISA (@koge2do) October 5, 2017
今回の炎上理由として「(プロ品質の)ボードゲームを無償で作ろうとしている」「クリエイター搾取だ」と言った観点での物言いも目立つ。しかし本企画は飽くまで体験型講座「ワークショップ」となる。
川崎市のボードゲーム、調べたけどこれワークショップだね?作ったものを売るわけでもないし批判される意味がわからない。
— レンカ (@kusare_renka) October 5, 2017
川崎市のQ&Aでも
- Q:一般発売はするの?
- A:現在のところ、販売は考えておりません。
となっており「無償で作って金儲け」という内容ではない。「地域振興」企画の一環となっている。
クオリティは求めない
川崎市の件、市民が楽しく作って市民に楽しく遊んで欲しいという意図のものでしょう。プロ製のクオリティも求めていないし、職員が楽するためでもない。目指すとこが違うのだから、無償であることを批判されるものではないような。 #クロス
— 白猫のタンゴ (@pucyuzu) October 5, 2017
スケジュールは5回参加。各回2時間~5時間という内容となっている。「この短期間で作れるか!」「雑なものしか出来ない」といった批判もある。
しかし、この企画は飽くまで「ワークショップ」なのでプロのクオリティが求められるものではない。飽くまで「楽しく」「ボードゲーム製作体験」をしながら地域について学べる企画である。川崎市のQ&Aにも下記の通り書かれている。
- Q:参加できない日程があるが、それでも申し込みしていいの?
- A:問題ありませんが、5回のうち半数以上は参加していただければ幸いです。
半数は参加して欲しいという記載は他の参加者(参加希望者)に対する配慮だろう。
0からは作らない
川崎市では、まちの皆さんと一緒に「景観」をテーマにしたオリジナルボードゲームを制作するプロジェクトをスタートします。大人から子どもまで楽しくあそぶことができ、あそびを通して今よりも川崎のまちを好きになる、そんなゲームの制作を目指します。10/2(月)よりメンバー募集スタート! https://t.co/7HtfG7wSaP
— わくラボ/ボードゲームカフェ武蔵新城 (@wakulab_info) September 28, 2017
こんな短期間でボードゲームを「作れない」といった批判も見られる。しかし、本企画はそもそも川崎市のNPO団体「わくラボ」によるものである。
「わくラボ」は「子どもから大人までわくわくできるあそびを提供する」を目標に活動している団体であり、代表は「おもちゃコンサルタント」の安藤哲也氏が務めている。同氏のボードゲームに対する熱い思いはこちらの記事からも分かるのでまず読んでみて欲しい。
記事を読めば川崎市(わくラボ)が「思いつき」でボードゲームを作ろうとしている訳では無いと分かるはずである。そもそも安藤哲也氏は昨年1月に栃木でも「LIFE CARD~これから、どこで何をする?~移住シミュレーションボードゲームワークショップ」を開催している。
記事を読んでいただければ分かるが上記ワークショップでも「制作してもらう部分」は「①勝敗条件」「②カード等の内容」など明確である。川崎市のワークショップでも同様の形で参加者が作るのは「勝敗条件」「カード等の内容」であり、根幹となる「ゲーム部分」はある程度完成していることが予想される。何より既に実績もあるので制作が行き詰まることは無いだろう。
なぜ炎上してしまったのか?
以前に別の自治体で同様の試みを行っているにも関わらずなぜ炎上してしまったのだろうか。原因は以下が考えられる。
- 川崎市という比較的人数も多く注目度の高い自治体
- 「報酬:無報酬(交通費も自己負担)」という言葉
- ボードゲームを「無償で作らせる」というミスリードの助長
特に問題だったのは「ワークショップ」にも関わらず「報酬」と記載してしまったことだと思う。「報酬」の記載があるため、「仕事」としての印象も強くなり、プロ向けに無償でお願いしているイメージが付いてくる。炎上内容としてはIT土方の5万円2日案件が近い。「参加費:無料」ならここまで炎上することはなかっただろう。
また、NPO団体「わくラボ」としての取り組みの部分をより強調した方が地域振興企画である意味合いが強く主張できたはず。
無駄に炎上を煽るブログ側の問題
インターネットの弊害として利用側は「捉えたい情報だけを受け取ってしまう」点や発信するメディア側も「炎上したほうが儲かる」ため「過激な内容の記事」を書いてしまう問題が存在する。以前、当ブログで紹介したものでは下記もその代表と言える。
情報元ソースをしっかり確認し、発信源はどこか?意図は何か?をしっかり見定める必要があるだろう。当ブログでは今後も炎上記事に対して中立な立場で記事を書こうと思う。利用者の方もWebの誤った印象操作に注意して欲しい。