アニメ版『ピンポン』と漫画版の違いまとめ【OPに感じる原作の魂】

湯浅政明監督作品アニメ版『ピンポン』と原作の漫画版との比較をまとめてみる。

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アニメ・原作話数 対応表

アニメ版 漫画版
第1話「風の音がジャマをしている」 第1話「スマイル」
第2話「ペコ」
第3話「風の音がジャマをしている」
第4話「孔文革」
第2話「スマイルはロボット」 第5話「ヒーロー」
第6話「老人と少年」
第7話「ドラゴン」
第8話「若者たち」
第9話「バタフライジョー」
第10話「男はど根性だかんよ!!」
第11話「性能」
第3話「卓球に人生かけるなんて気味が悪い」 第12話「老人^2/少年^2」
第13話「インハイ卓球予選会 男子シングルス」
第14話「少年怒る」
第15話「前で捌く」
第16話「ヒーロー不在」
第17話「First Game」
第18話「Second Game」
第19話「Third Game」
第4話「絶対に負けない唯一の方法は闘わない事だ」 第20話「ペコvs.アクマ」
第21話「海王」
第22話「5人の卓球選手」
第5話「どこで間違えた?」 第23話「秋」
第24話「不協和音」
第25話「冬が近い」
第26話「おいてけぼりブルース」
第6話「おまえ誰より卓球好きじゃんよ!!」 第27「スマイルロボ」
第28話「星に願いを」
第29話「もがけ青春」
第7話「イエス マイコーチ」 第30話「ヒーローになるための試練その1」
第31話「問1・月本誠が今、必要としているもの」
第32話「マイコーチ」
第33話「続、星に願いを」
第34話「Do you understand?」
第35話「裏技」
第8話「ヒーロー見参」 第36話「春。」
第37話「ヒーロー見参」
第38話「卓球しましょう」
第39話「We are ping pong Players」
第40話「再見」
第9話「少し泣く」 第41話「モンスター」
第42話「スマイルモンスター」
第43話「一葉落ちて天下の秋を知る」
第44話「ベスト 4」
第45話「学園熱血スポーツ根性物語」
第10話「ヒーローなのだろうが!!」 第46話「ヒーローになるための試練その2」
第47話「カザマノココロ」
第48話「星と月と……」
第49話「Play」
第50話「Fly」
第51話「High」
第11話「血は鉄の味がする」 第52話「PM3:30~4:00」
第53話「復活劇」
第54話「ピンポン」
最終話「春が終わる。」

内容の違い

時代性の反映

松本大洋による原作『ピンポン』が連載されたのは1996年。アニメ版『ピンポン THE ANIMATION』が放送されたのは2014年であり、実に18年の歳月の開きがある。そのため原作版の表現から下記の内容が変化している。

  • 漫画版は21点制、アニメ版は11点制に変化
  • スマイルが遊ぶルービックキューブ携帯ゲーム『モンスターロボ』(アニメ最終話でルービックキューブで遊ぶシーンあり)
  • チョコボール パチパチ味
  • トンビが食べ物を取るのは最近になってから
  • 「高齢化社会を迎える」→「高齢化社会を支える」に変更
  • ルンバ
  • 小泉の年齢設定が62歳から72歳に変更
  • ガリガリ君 シチュー味
  • アクマの裏ラバー(当時は裏面打法は普及していない)
  • 高カカオやら高価なチョコがもてはやされる昨今」
  • 「たかが2.5gの球の行方に」 → 「2.7g」(当時は38mm球を使用。現在は40mm球)
  • 競技用マット
  • 卓球ロボット
  • 最終話のSNS表現

登場人物の追加

風間竜

風間竜一の祖父であり、海王理事長。卓球用品ブランド「ポセイドン」のCEO。アニメ版ではドラゴンの生い立ちや境遇が新たに描かれており、風間にとっての重圧の象徴。オババ、バタフライジョーの旧友でもある。

風間百合枝

ドラゴンの従姉妹であり、ドラゴンと交際している。同じく海王学園の真田が片思いしている。フラワーアレンジメントの修行のために単身ヨーロッパへ。成功してデザイナーに。

チャイナの母親

中国の田舎のお菓子工場で働いているというチャイナの母親。チャイナは単身日本に残って卓球をしているがクリスマスの際に母親が来日、孔のチームメイトと共にワンタンを作るシーンが描かれた。

ペコの兄妹と母親

ペコが日本代表育成センターで練習している際に母親が着替えを届けに来た。兄妹も全く同じ顔で5人いる模様。

風間の父親

アニメ版では風間の父親が回想に登場し、事業で失敗した末に死亡している。ドラゴンにとっての重圧の一因。幼少期は共に卓球をしていたシーンも描かれる。

設定が異なるキャラ

江上

原作ではスマイルに負けるだけの脇役だが、アニメ版では敗北後にでバイトしたり、海外に自分探しの旅に出たり、国際試合の応援に行く等愛されキャラに変化している。

風間卓

原作では藤村コーチであり、風間家と無関係。チームへの思い入れ、風間への心配がより描かれている。バタフライジョーを知っている。

田村道夫

オババの孫である田村道夫は藤堂大学卓球部監督から日本代表育成センターコーチに変更されている。ちなみに藤堂は「藤沢」と「辻堂」の組み合わせだと思われる。

湯浅版と原作の比較

ペコが強い理由

漫画とアニメではペコの戦い方が大きく違う。原作でのペコは田村道夫指導の元裏面打法を習得したことで強くなっている。当時は今ほど裏面打法が普及していなかったことが理由であり、原作には下記のセリフが存在する。

  • オババ「国内での成功例あるのかよ、コレ?」
  • 道夫「奴にしかできねえ芸当だよ、これはっ!」

しかしアニメ版では「卓球を楽しむ」ペコの柔軟な戦い方「スポンジのような吸収力」の上達スピード・才能が強さの理由に変わっている。アニメ版ではタムラの賭け試合で背中越しに打つ、股の間から打つなどトリッキーな戦い方をしているほか、風間戦でも突然カットを試すなど単なる「前陣速攻」ではない戦い方をしている。また、以下のセリフもアニメオリジナル。

  • ペコ「努力なんて才能のないやつがするもんさ」
  • オババ「あの子にとっちゃ遊びなんだろうよ。人の背中を蹴ってあっという間にかけのぼる。恐ろしいほどだ全く」
  • ペコ「卓球ってのはなメタクソ楽しいんだぜ」

アニメ版のペコは「才能で風間を上回る」「卓球を楽しむ」という面がより強調されている。

ペコが再起する理由

ペコはインハイ予選でアクマに負けて一度卓球から足を洗う。この際、原作ではペコはゲーセンに通い詰め、「ポコさん」で通るようになっている。その代わりにアニメ5話で女子と海水浴に行っている。このシーンの水の表現色使いは何とも湯浅らしい。

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その後ペコが再帰する流れだが、橋から海に飛び込むタイミングが異なっている。原作では橋から飛び込んだ後タムラに戻ってアクマと出会い、海で泳いで溺れるという流れ。アニメ版はアクマとの会話後に橋から飛び込み、アクマが助けるというドラマチックかつ簡潔な描かれ方に変わっている。

ペコが再起する理由も異なる。原作ではアクマの「お前は沖にすら出ちゃいねぇ」発言に対して、ペコは「そう…そうか。沖にすら…」と呟いている。このシーンが決定的であり、原作でのペコはアクマに諭されて卓球の世界に戻っている。アニメ版では幼少期のスマイルの写真を見たことがきっかけに変わっている。アニメ版ではより「ヒーローとしてのペコ」が強調されている。風間戦前の「スマイルのために打つのかい?」「オイラがヒーローだからっしょ」や「皆を救うのだろうが」もアニオリで象徴的。

登場キャラの掘り下げ


アニメ版では登場キャラの背景がより掘り下げて描かれている。ドラゴンは風間竜、風間百合枝、父親という追加キャラによって背負う重圧、戦う理由が綿密に描かれている。過去を振り返る回数も多く、風間が置かれている境遇がより分かりやすい。また、ペコ戦では風間にも羽が生え卓球の重圧から開放される表現もある。

チャイナはアニメ版で最も追加描写が多い。母親のエピソード、チームメイトとの交流、練習シーンがより詳細に描かれている。また、原作では冬のインハイ1回戦目がチャイナとペコの試合のため、チャイナは1回戦負けしている。アニメ版では2回戦のため、1戦分チャイナの見せ場を作っていると言える。

大田キャプテンが家の家電店の仕事で忙しいこと、元キャプテンとのやり取りや3スター球を受け取る流れもオリジナル。

クリスマスには各登場人物の様子が掘り下げて描かれている。

アニメ最終回、5年後の下記もオリジナル。

  • チャイナは卓球選手として成功
  • 佐久間は結婚する → 3人目の子供が生まれる。トラックを買って独立する
  • 月本は彼女がいる

全体的に登場人物への救済の味合いが強い。

湯浅らしい演出

スマイルロボットの演出

スマイルのロボットらしい演出もオリジナル。劇場版クレヨンしんちゃんで一風変わったロボデザインしてきた湯浅らしいロボットが描かれる。6話冒頭でも進撃のロボットとして演出は楽しんでいそう。このロボット設定が最終話でのスマイルが殻を破る演出に生きている。

ドラゴンの演出

湯浅らしい人物・物体が流体的に変化する表現も目立つ。ドラゴンvsチャイナ戦では球がドラゴンになったり雷をまとう他、ペコ戦でも風間が大きくなったり、独特の色使いで描かれている。

ドラマチックな演出

アニメ版では幼少期の振り返りが多用される。しかし初めてセリフが入るのは8話であり、後半のインハイに演出的な見せ場を集めていることが窺える。

僕らはみんな生きている」の歌と幼少期にそれぞれが卓球をやっていた映像、オババ、風間、小泉の3人の関係性もアニメ版のみ。最終話での尺稼ぎの意味合いも強い。

その他

  • ペコが授業中にスマイルと海王の話する下りは無し
  • なんかホワイトベースみたいな校舎だなこりゃ
  • 小泉先生が風間に怒っている
  • スマイルがバタフライジョーの話を聞くタイミング
  • 絶対負けない唯一の方法「勝つことだ」→「戦わないことだ」
  • ペコがラケットを燃やす → 海に投げる
  • スマイルと小泉のデートが冬休み → バレンタイン
  • オババと小泉の関係「あんたいつもそうだ。相手の顔色ばかり伺っておどおどして、そういう態度が一番相手を困らせる」
  • ペコのとスマイルの距離感

感想

以上の比較から湯浅らしい演出を用いつつ、登場人物を丁寧に描く形で現代向けにリブートされた作品が『ピンポン THE ANIMATION』であることが分かる。原作版の方がより男臭く・汗臭く・スポ根よりな印象が強い。アニメではゆりえが登場したり、ペコのゲーセン落ちが無い分ライトに見られる作品に仕上がっている。また、牛尾の音楽の影響も強い。

ドラゴンやチャイナの境遇がより描かれていることで登場人物にも共感しやすい。特にクリスマスのエピソードは愛おしく素晴らしい内容。湯浅監督作品では原作補完する形での追加改変が多いと思う。キャラクターエピソードを追加する形で「裏ではこんな事がありました」がよく描かれている。補完されたエピソードを楽しめる弊害として作品が持つ純度は薄れてしまっている。

サイエンスSARUのフラッシュ技術によって描かれる卓球のアニメーションも素晴らしい。とにかく動く。原作ではチャイナのドライブ戦法はあまり描かれていないのだが、アニメ版ではどのように回転が加えられているのか、チャイナの技術の凄さが伝わってくる。卓球シーンのも素晴らしく、インターハイ時に卓球の打球音が音楽に変わる牛尾の音楽もまた良い。

アニメ版『ピンポン』は湯浅が描くことでより大衆受けする良質なアニメーション作品になったと思う。原作の汗臭さという点では大平晋也が描くOPが『ピンポン』本来の姿であると思う。純度はやや薄れたものの、それ以上に湯浅による演出、表現が素晴らしい。

アニメーション作品として今後語り継がれる作品だと思う。まずは素晴らしい映像化をしてくれたことに感謝をしたい。湯浅政明は現在Netflix向けアニメとして『デビルマン』のアニメーションも作っている。これにも期待したい。

アニメ:ピンポン THE ANIMATION
原作 松本大洋
監督
構成
脚本
湯浅政明
音楽 牛尾憲輔
制作 タツノコプロ
放送 2014年4月 ~ 6月
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