日清新CM『魔女の宅急便』が炎上してしまう理由【実写化映画考察】

日清カップヌードルの新CM『HUNGRY DAYS 魔女の宅急便』の放送が開始された。そこで今回は漫画・アニメ原作のCM・実写映画が大量生産され炎上してしまう理由について考察する。

昨今の漫画・アニメ原作CM 実写化映画

原作ありCM

実写
  • 実写版ドラえもん(トヨタ)
  • 元セーラームーン etc(ソフトバンク)
  • 25年後の磯野家(グリコ)
アニメ
  • アルプスの少女ハイジ(家庭教師のトライ)
  • 魔女の宅急便(日清カップヌードル)

実写化映画(2017年)

  • 3月のライオン
  • ピーチガール
  • 銀魂
  • 心が叫びたがってるんだ。
  • ジョジョの奇妙な冒険 第4部
  • 鋼の錬金術師

漫画・アニメ原作が増える理由

こういった漫画・アニメ原作の映像作品が増えてしまう理由は下記の2つだと考えられる。

宣伝効果が高い

いずれのCM・実写化作品も原作が超人気作品となっている。そのためCM・実写化するというだけで大きな話題を呼ぶ。今回のカップヌードルも例外ではなく、『魔女の宅急便』のその後というだけで大きな話題性を呼び、CM製作費を上回る宣伝効果を得られている。

企画が通りやすい

もう一つの大きな理由は企画が通りやすい点である。実写化のためのプレゼンでは「この漫画原作の~編を実写化します!キャストは~!監督は~です!」というだけで大体伝わる。同時に漫画の売上、過去の実写化作品の売上データなどを挙げれば「それっぽい」説得力を持つプレゼン資料が出来上がる。既に原作があるためイメージの共有を行いやすくGOサインも出やすいのである。

炎上してしまう理由

しかし、原作ありは良いことづくめではない。原作ファンに叩かれて炎上してしまうリスクを持っている。内容によっては炎上後に悪評が広まるのも早く、制作費を全く回収できない事態も発生する。炎上してしまう主な理由は下記だと考えられる。

有名俳優をとりあえず使う

ありがちなのが宣伝効果をより高めるために、話題性のある有名俳優をとりあえず使うパターンである。昔の例で言えば『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のドラマ化では明らかにラサール石井が適任なのに話題性から香取慎吾が起用されていた。他キャストも話題性の高い人物のみで固められドラマの評価は散々であった。

原作を無視した物語

実写化の際に原作内容が無視されることも多い。ソフトバンクCMは元セーラームーンを謳うにも関わらずムーンスティックが自撮り棒に変更されるという原作ファンを馬鹿にした内容だったため大炎上した事件も起きた。

『魔女の宅急便』新CMについて

今回の『魔女の宅急便』もまた原作無視の改変された内容となっている。なお本投稿における原作はジブリ版「魔女の宅急便」を指す。

舞台が東京になっている

最大の違いは舞台である。なぜか舞台は東京になっている。BGMがRAD似なバンプが担当している辺り『君の名は』を意識してるのだろうが舞台を変える意味が分からない。

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キャラデザインが大きく異る

キャラデザを担当しているのは『ツルモク独身寮』などで知られる萩之内英策。17歳という設定から印象を大きく変える必要がったのだろうが、落差が激しすぎる。トンボ・キキ共に小さい頃の面影は無く、アイテム、髪型で無理やり寄せている印象を受ける。

キキが告白する物語

CM内の決定的なシーンはキキがトンボに告白するシーンである。これまで直接的な表現を避けてきたジブリ版を台無しにするシーンとなっている。青春感を出すための演出なのだろうが露骨に狙った演出で気持ち悪いという印象しか残らない。

原作愛の無いCM・実写化は炎上する

総じて言えることだが原作愛の無い実写化・CMは炎上してしまう。今回のCMの例では『魔女の宅急便』の要素は殆ど入っていない。キキとトンボである必要性が感じられないのである。

愛の無い二次創作は原作を汚す結果にしかならず、神聖化された原作を汚されることにファンは憤りを感じてしまう。「商業的な二次創作は必ず露呈し、原作にプラスになることは無い」のである。

ちなみに角野栄子の原作版『魔女の宅急便』ではトンボとは遠距離恋愛になるし、ジブリ版のその後についても宮﨑駿は下記のようにインタビューに答えている。

キキは魔女として生きていけばいいわけだけど、トンボは試験に合格して大学に行って、仕事を見つけなければならない。それが出来て初めて「僕とデートしてください」とキキを誘うことが出来るんです。僕が思うにキキは、おそらく宅急便の仕事を続けながら、色んな人に出会って、毎日を楽しんで、時にはちょっと腹を立てたりしながら生きていくんですよ。キキが配送サービスの会社を起業して社長の座に就くというストーリーなんて、誰も観たくないですよね(笑)。

参考:宮崎駿監督『魔女の宅急便』はこうして生まれた

宮﨑駿の考えるその後を聞いた後だと本CMがいかに安直な考えで作られた代物であるかが良く分かる。

心配なのは本CMがプロジェクト第1弾という点である。今後第2弾、3弾でも名作が汚されると思うと非常に悲しい。制作する方々には原作愛を持っていただき、安直な二次創作は止めてもらいたい。

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コメント

  1. 匿名 より:

    CMやって売り上げ落とすとかアホですか?

    • タコッケー より:

      コメントありがとうございます。
      売上は分かりませんがCMは間違いなく話題になりましたからねー。
      炎上商法という観点では成功していると思います。あの雰囲気が好きな方も居るでしょうし。
      企業イメージとしては今までの挑戦的だった日清のCMとずれていますね。
      このCMを世界でそのまま放映出来るかという点で考えてもNOですし。
      原作ありの題材を扱っているという点も良く考えて大事にして欲しいものですね。
      ありがとうございました。

  2. 匿名 より:

    今度はハイジか、まぁ今後日進は買わないかなぁ
    原作はジブリじゃなくても多くの人の記憶に残っているものがジブリな以上、
    汚い言い方すれば原作レ○プというやつにあたりますね
    ハリーポッターの舞台か何かでハーマイオニーを黒人の方を起用するという発表時
    海外とかとくに相当荒れてましたけど、黒人だから荒れたのではなくて映画のイメージを
    崩されるのが嫌だという話だったのに、原作者J.Kローリングは理解できていないようでしたし
    結局取り扱うだけの力を持った所に理解者がいなかったということなんだろうね

    • タコッケー より:

      やはりシリーズ化してきましたね。
      CM業界的に「君の名は。」意識のアニメCMが非常に増えています。
      原作の持つ知名度とギャップが話題になっているのは事実なので戦略としては成功ですね。
      騒いでいるのは一部ファン程度の印象なんでしょうね。残念ですがカップヌードルは好きなので今後も買います。

  3. 匿名 より:

    安直に恋愛と絡めていること、原作へのリスペクトが感じられないこと、「アオハルかよ」とかいうセンスの皆無なキャッチコピー、新海誠作品を意識したような作風…..

    恋愛脳のスイーツにはうけるのかも知れませんが、auの昔話にせよトライのハイジにせよこういう原作レイプは本当にやめて欲しいですね

    • タコッケー より:

      新しくキャラクターを生み出すのは大変なので分かる部分もありますが、やり方が雑ですよね。
      好印象を持つ女性も居るようなので狙いの層には受けてそうですね。
      低燃費少女ハイジは好きでした。ありがとうざいました。

  4. バーカ より:

    美化しすぎて、見ててなんか恥ずかしくなってくる。

    あと、「君の名は」に似せてるというが、全く違う。流行りに影響され過ぎて恣意的な見方になってる。

    新海風というのなら、z会や大東建設のcmを見てから言えっつーの。

    • タコッケー より:

      バーカ様コメントありがとうございます。
      キャラデザに難ありですよね。
      企画的時期的にも絶対に意図していますよ。
      大成建設の間違いですね。
      Z会と大成建設のCMは新海誠本人がやっているので「新海風」では無いです。本人です。
      ありがとうございました。

  5. 匿名 より:

    CMの魔女宅キャラデザってジブリ感全く無いという以外にもなんか嫌だなーって思ってたんですがこの記事で絵見てて気づきました。
    ちょっと色気あるのが嫌なのかも(笑)
    ジブリのあの良い意味で色気のない健全な絵が他の作家さんの絵によってちょっと色っぽさが出るのが個人的には抵抗あるのかもしれないです。
    作家さんの絵自体は好きですしそこは全く抵抗ありません。あくまでジブリの改変としてはってことで。

  6. 匿名 より:

    原作と違い過ぎて原作者からは疎まれるほど改変したジブリ版アニメのファンが改変すんなーと言ってるのはなんか悪寒がしますね

    • 匿名 より:

      「ジブリが原作に敬意もなく改変するのは善だが、ジブリへの敬意のない改変は悪」
      つまるところそういう意味ですものね。

      2019年の原作者へのインタビューでもジブリ版に  
       「名前と世界観は変えるなとのみ言ったが、流石に話違いすぎね?」
      「原作の宣伝になったから良しとする」  
       と言ったのはよほど思うところがあったのでしょう