昨日の記事で吾妻ひでおに少し触れたので関連して書籍を紹介。
失踪日記
『失踪日記』は吾妻ひでおが描くノンフィクション漫画。吾妻が漫画の仕事を放棄して失踪、自殺未遂、ホームレス生活、肉体労働、アル中病棟入院するまでの実体験がポジティブに描かれている。
30万部を突破したベストセラー漫画であり、第9回文化庁メディア芸術祭大賞、第34回日本漫画家協会賞大賞、第10回手塚治虫文化賞マンガ大賞などを受賞している名作である。
内容
本作の内容は失踪(1回目)、失踪(2回目)、アル中病棟の3エピソード構成となっている。
1回目の失踪は人生初のホームレス生活編であり、生ゴミを漁り寒さに耐えながら生き抜く姿が客観的に描かれている。
2回目の失踪では路上で配管工としてスカウトされた後の肉体労働編となっている。配管工の仕事のあれこれや個性の強い同僚、面倒くさい人間関係が淡々と描かれている。
アル中病棟編はショッキングな内容。幻覚が出始めたり、不安に襲われての自殺願望、おやじ狩りからの精神病院に強制入院させられるまでがリアリズムを排除して描かれている。
魅力
本作の魅力は以前紹介した山賊ダイアリー同様に我々にとってファンタジー漫画であることだと思う。
私たちはホームレスがどうやって飢えをしのぎ、寒さに耐え日々を過ごしているのか考えもしないし、アル中に対しては侮蔑の目しか持っていないと思う。しかし本作を読むと彼らは非常に身近な存在であり、自分も一歩間違えば同じ道を歩んでいた可能性があることを実感できる。
そんな一見すると悲惨なエピソードもリアリズムが排除されており気軽に読むことが出来る。これは抽象化が可能な漫画というメディアならだと思う。
単なるノンフィクション漫画という枠には収まらない完成度の高い作品なので是非一度手にとって欲しい。
[amazonjs asin=”4872575334″ locale=”JP” title=”失踪日記”]アル中病棟
『失踪日記2 アル中病棟』は『失踪日記』の続編にあたる作品。無論こちらもノンフィクション。前作での精神病院入院後にアルコール依存症を克服していく過程が描かれている。
内容
前作はホームレス生活や肉体労働などバリューに富んだ内容だったが本作はアルコール中毒者が入院する精神病院での生活や人間模様が描かれている。
アルコール依存症についての解説も詳しく書かれており、本作を読むだけでアルコール依存の怖さや治療について理解が深まる内容になっている。
魅力
本作の魅力はアルコール依存について漫画で学べることである。アルコール依存症に関する漫画版バイブルと言って過言では無い。
前作のようなエンタメ性は低いものの病院での生活やアルコール依存症患者の人間模様がよく分かる。登場人物は皆キャラが濃く「どうしようもない人間」ばかりである。その人間たちの体験談や関わり合いもドラマ性が高く面白い。
本書で学べることは非常に多い。アルコール依存は薬物依存と本質は同じであり不治の病であることや、断酒会やAAといった自助グループの存在も本書で初めて知った。保健体育の教科書より濃い内容なので小中学校でも読ませるべきだと思う。
[amazonjs asin=”4781610722″ locale=”JP” title=”失踪日記2 アル中病棟”]終わりに
どちらの作品もノンフィクションとは思えないほど濃い内容だった。アル中病棟に至っては330ページ超えの大ボリュームであり、吾妻もトータルで10年描いていたとインタビューで答えている。
ちなみに両方の書籍ともカバー裏にちょっとしたおまけが用意されているのでお持ちの方は確認してみて欲しい。
食道癌治療のため現在入院です。 pic.twitter.com/4hjFzvUDXG
— 吾妻ひでお (@azuma_hideo) March 31, 2017
その後の吾妻だが長年の不摂生が祟ったのか食道がんを患っている。現在は無事に退院しまた絵を描いているが何とも心配である。萌えの元祖とも呼べる人間なので今後も元気にコミケに参戦して欲しいと思う。
漫画:失踪日記 | |
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ジャンル | ノンフィクション |
出版日 | 2005年3月1日 |
作者 | 吾妻ひでお |
漫画:失踪日記2 アル中病棟 | |
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ジャンル | ノンフィクション |
出版日 | 2013年10月6日 |
作者 | 吾妻ひでお |