週刊少年ジャンプ31号に読切掲載された『想いよ届け~物理的には届かない~』の感想。
目次
どんな漫画?
〆切は3月31日(当日消印有効)!第93回手塚賞・第86回赤塚賞大募集!本日発売のジャンプ14号では赤塚賞審査員の先生方に「どんな応募作を期待しているか」を一斉インタビュー!先生方それぞれの率直な意見は必読ですよ。 pic.twitter.com/S68yob3rXh
— 少年ジャンプ漫画賞 (@jump_mangasho) March 6, 2017
『想いよ届け~物理的には届かない~』は仁科翔が描くギャグ漫画。ギャグ漫画の新人賞である「赤塚賞」では2017年上半期準入選している。作者の仁科翔はまだ26歳。6月の赤塚賞発表から僅か1ヶ月でのスピード掲載となっている。
内容について
ビジュアル
https://twitter.com/oub_ckg/status/881799166883536896
まず目を引くのはビジュアルである。彼氏であるトオルの異常なまでの高身長と異様な四肢の長さを楽しむ内容となっている。
ギャグ漫画としての分類は読者が突っ込む形のシュールギャグであり、話自体はトオルの見た目とは無関係に普通に進む。というかトオルの見た目さえ除けば出会い、デート、壁ドン、女性を巡っての喧嘩等まともな話なのである。見た目さえ除けば。
似た漫画『Canvas』
1枚目:お、おう…
2枚目:う、うん……
3枚目:ま、まぁ許せるかな………
4枚目:おいちょっと待て。どーやって進んだ。【どーやって進んだ!?】 pic.twitter.com/PB071OwM2I
— (●´ω`●)@あつ (@8000_atu) December 28, 2016
同様に見た目を奇抜にしたシュールギャグ漫画としては『磯部磯兵衛物語』の仲間りょうが描いた読み切り漫画『Canvas』が挙げられる。こちらも狂った顔の大きさと無関係に進む内容となっていた。ギャグ漫画としての構造は全く同じである。
ギャグ漫画としての課題
ネタ不足感
ひと目でこの漫画はヤバいと思わせるビジュアルは素晴らしい。しかし内容のネタ不足感は否めない。
比較対象としての『Canvas』では顔面からぶら下がるネクタイ、顔面に引っ掛けるシートベルト、吊革にぶら下がっての通勤、サドルに脚が届かないが乗れる自転車、頭から脚と腕が生えているだけのシャワーシーンやレントゲン写真など体型を利用したネタが豊富だった。
本作のネタは目を合わせて会話するときの体制、頭なでなでの構図、襲いかかるような壁ドン、手足が絡まる乱闘シーンだけに留まっている。最後の4ページはネタ切れしたので繋いだ印象が強く、最後の見開きは雑な感じが逆に面白いのだがもうちょいネタを詰めて欲しい。
1話完結で色々パクれば
さくっと読切で読む分には楽しめる内容なのだが本作が恋愛漫画ベースのシュールギャグであることを考えると発展性が無い。パターンが少なすぎるのである。
ギャグマンガ日和の好きな台詞とジャスティスさんです。 pic.twitter.com/qSJxE6pQRl
— 葱 (@potipoti93) November 5, 2016
いっそのこと『ギャグマンガ日和』方式で1話完結にすれば昔話ベース、スポーツ漫画、海賊冒険漫画、ヒーロー漫画、麻雀漫画など何でもパクる題材に出来る。その中の主人公1人のビジュアルを変えればシュールギャグとして成り立つ。
シュールさの強調
体型と釣り合ってない世界観の部分もより強調して際立たせたい。喫茶店でのデートシーンは天井に頭がぶつかったり、椅子に座れていないシュールさを出しても良いと思う。世界に馴染めていないのに周りが違和感を持っていないギャップをもっと出していきたい。
ギャグ漫画の難しさ
何も考えずに読む分には楽しめるギャグ漫画だった。ギャグ漫画というのは各回のネタ出しがとにかく辛いジャンルである。吾妻ひでおの書籍や『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』の曽山一寿のインタビューからも大変さが良く分かる。
作者である仁科翔はまだ26歳なので精神を病まない程度に頑張って、今後の本誌連載に期待したい。