カドカワの決算詳細が発表されドワンゴが運営する位置情報ゲーム『テクテクテクテク』が8億円の赤字となっていることが明らかになった。年間売上860億円を突破し躍進を続ける『ポケモンGO』との差は何だったのか。理由を考察してみる。
どんなゲーム?
『テクテクテクテク』はスマホの位置情報を活用した一生歩けるRPG。プレイヤーはアプリ内に表示されたマップから街区を塗りつぶし、宝箱やゴールドを入手。モンスターを倒し装備を整えてボスを討伐する。AR機能にも対応しており、リアルの風景でキャラクターとの撮影も可能。
開発は『不思議のダンジョン』シリーズや『かまいたちの夜』を生み出してきた中村光一×麻野一哉コンビ。基本プレイ無料で配信中。
問題点
歩く『ドラクエ』というゲームコンセプトは非常に面白いのだがゲームとしては問題点があり過ぎる。ひとつずつ解説してみよう。
開発力不足
毎日毎日通信エラーでやんなっちゃう #テクテクテクテク pic.twitter.com/RrVwoTEVvc
— 原田かわせみ (@qxjjx) 2019年1月23日
アプリをインストール・起動してみると分かるが致命的に重い。リリース時点に比べると負荷は改善されつつあるが、それでも興味を持って始めた程度の一般人なら即日アンインストールしてしまう程度には何をするにもストレスが溜まる。主な不満点を挙げただけでも下記の通り。
- 自宅Wi-Fi環境でもアプリ起動 → スタートボタンが押せるまでに80秒
- キャラタップ → 戦闘開始までに5秒
- 頻繁なロード
- 異常な電池消耗
- 通信次第で予約塗りが間に合わない
- niconicoアカウントを新規作成しないとバックアップ不可
通信量が尋常ではなくゲームプレイ中は常にロードが発生、敵・宝箱など3Dモデル多用のため処理落ちが最大の敵で戦闘中は毎ターン敵が攻撃するまで3秒間待機する有様。ゲームとしてどうこう以前に苦行でしかない。
ゲームそのものは古き良きドラクエベースなのだから戦闘毎に3Dキャラクターがアニメーションする必要など全く無くドット絵でも良いはず。というかメインとなるゲーム性が街区を塗りつぶす『スプラトゥーン』なので敵キャラ自体不要。技術力・開発力の問題もあるがアプリの設計時点でミスってる感が半端ない。
キャラ魅力
テクテクテクテクが流行らない理由
マスコットキャラがキモい pic.twitter.com/nN7nCUFXqZ— ✵include✵Ifrit (@include00_) 2019年2月14日
苦労して読み込んだ3Dモデルのキャラクター、戦闘アニメーションは確かに頑張っておりレベルファイブのRPGキャラクターを彷彿とさせる完成度。しかし新規IPとして『ポケモンGO』に立ち向かうには余りに弱すぎる。新規ユーザーを獲得し、ゲームの方向性を決定づける肝心なコラボ先も下記の通り。
- エヴァンゲリオン
- 小林幸子
- キズナアイ
- ポプテピピック
- 田中ヒメ
- 鈴木ヒナ
- 高須院長
エヴァ以外は完全にニコニコの悪ノリで閉口するしかない。そもそもRPGジャンルとの接点が無いコンテンツを集めて何がしたいのか。話題性目的のチョイス自体が世間の一般的な感覚と大きくズレており、ニコニコ(ドワンゴ)衰退の原因を垣間見てるようで悲しくなる。これが『ドラクエ』とコラボしていたなら現状も大きく違っていたはず。ロイヤリティをいくら支払ってでも強力なIPとタッグを組んで『ポケモン』と戦える土台を築く必要があった。
ビジネスモデル
カドカワの決算詳細出たけど、ドワンゴ株評価損と盛った業績予想を忘れると、決算としては良い部類に入るぞ。特に出版が良い。ニコニコの赤字も小さい。ただ、テクテクテクテクが売上900万円&赤字8億円で泣いた。僕もデイリーTTP800万、保有TTP3億超えまでやってるけど、1円も課金してないからなあ pic.twitter.com/d243Iv2GO7
— すずき@角川ライブラリー (@michsuzu) 2019年2月13日
ソーシャルゲームとしてビジネスを継続するために重要な課金形態も大失敗。開発費8億掛けて売上が900万円なことからも分かる通り本作は課金しなくても問題なく遊べる。というか課金したい欲求が全く起きない。
『ポケモンGO』は「ポケモンを捕まえる」というコンセプトと卵マラソン・レイドパスの仕組みがマッチしており、より「快適に」楽しむために課金したいという欲求が自然に発生してくる。しかし、『テクテクテクテク』における課金対象は宝箱の解錠、となりぬり等で「街区を塗る」コンセプトと全くマッチしていない。それなりに遊んだ筆者でも未だに課金する意味が分からない。
感想
ゲームのコンセプト自体は面白く開発インタビューを読んでも目指した方向性は理解できる。惜しむべきは開発力の低さとキャラIPの弱さでドワンゴの時点でこの結果は決まっていたとさえ思う。『妖怪ウォッチワールド』も後発とは思えない課金仕様で廃れたり国産の位置情報ゲームが花開かない状況は何とも悲しい。『ポケモン』に太刀打ちできるのは『ドラクエGO』だけだと思うので密かに期待しつつ今は『ポケモンGO』に勤しむとしよう。
コメント
>惜しむべきは開発力の低さとキャラIPの弱さでドワンゴの時点でこの結果は決まって~
中村光一さんが誰か知らないんですね。
トルネコの冒険がどのような経緯で作られたか検索した方がいいよ。
ああああ様、コメントありがとうございます。
記事内容100回読み直して下さい。
指摘しているのはドワンゴ側の問題点です。
街やってないから読解力が無いんですかね。
あとゲーム作ったこと無い人にありがちですがプロデューサー&ディレクターの影響力を過信しすぎです。
開発チームの力量で仕上がりは大きく変わるしパブリッシャーがドワンゴの時点でコラボ先の選定センスが致命的となり、十分な開発期間も用意できなかったことが問題なのです。
ありがとうございました。
全く記事の通りです、ポケモンGOでもありましたが、地方(田舎)に厳しい条件です…
それどもゲームコンセプト自体は良いので、そのうち良くなる、メンテナンスが終わったら改善されると思いつつ、今だ裏切られ続けてもやっています。
ドラクエコラボも悪くないですが、チュンソフトの「風連のシレン」をベースにテクテクをしていったらいいのになあって思っています。
まず、スタートを決めて(基本居住地がスタート)、街区を塗っていくとシレンの世界でファンタジー化していく。県境には容易に行けない関所があり、通行手形が必要。通行手形を手に入れる方法は、街区を塗ったあとに出てくるダンジョンの中に落ちてるのを見つけるか、課金で手形を手に入れる。手形はどの階に出てくるか分からず(完全ランダム)、装備を強化しながら手形を探す、ダンジョン内は以前のシレンのゲーム性を生かし、武器、防具なんかも失ったりするので、失いたくない人は失わない課金アイテム巻物を購入して守る。基本アイテムはダンジョンで拾えるが使えるレアアイテムなんかは滅多に落ちてないから、そういうのを課金で手に入れるといったシステムにすれば、ゲームを有利に進めたい人は課金する。モンスターも倒した後にたまに仲間になって、これも育てて強くしてダンジョンに一緒に連れていけるけど、所詮モンスターなので時にはいう事を聞かないでこちらに牙をむく、力尽きてアイテムを失いたくない人は課金アイテムでずっと手なずけておく。モンスターも武器類も合成で新たなモンスター、武器が生まれたりすれば、飽きないでプレイできる。そうやって他の都道府県に移って街区を塗っていく。
長々と書いて申し訳ありません、でもこんなゲームもあったらいいなと思い書いてみました。
凛人様、コメントありがとうございます。
純国産ゲームにも関わらず田舎救済が無い仕様は残念ですね。
仰る通りコンセプト自体はシンプルな魅力を有しています。だからこそ技術力の低さとIPの弱さが残念でなりません。
『風来のシレン』もゲーマー的には理想ですね。すごく分かります。
ローグライクジャンル自体がリプレイ性も高く、運要素の強さも他ソーシャルゲームに対する大きな差別化要因にもなり得ます。
提案内容に関して突っ込むと「シレン」の認知度の低さがまず課題で「ファンタジー化」の概念との相性も悪さ、レベル1に戻る・アイテムロストの仕様もソーシャルゲーム的観点から初心者に受け入れがたい点が気になり、モンスターを仲間にする仕様もトルネコ3のほうが近いですね。
関所やモンスター、ロスト救済の課金仕様はデメリットを避ける上で必須とも考えられるため、ユーザー的には大きな反感を買うと思います。
現在サービスで広く受け入れられている方式は『ポケモンGO』のような「便利に」「効率的に」楽しむための内容や『フォートナイト』のようなゲーム性に影響しないライトな課金圧なので調整が難しそうですね。
熱量のこもったコメントありがとうございました。
中村光一は開発者としてはすごいと思うけど、プロデューサー&ディレクターとしてすごいとはあんまり思えないんだよなあ、比較的現場を見ることができたであろうチュンソフト初期作以外はどんどん微妙になってる感ある
シレンも街も好きだったのだけどね…
コメントありがとうございます。
ノベルゲーム、不思議のダンジョンシリーズ以外の実力は測りかねますね。
「中村光一」の名前から「不思議のダンジョン」的なゲーム性を期待したのですが、実態が大きく異なったのは残念過ぎます。
今回の失敗もドワンゴの問題が大きいので国産位置ゲームは諦めずリリースされ続けて欲しいですね。
ありがとうございました。
ポケモンGOとの最大の差をピックアップするなら、ポケモンGOがIngressを土台にしていることに言及しないのはややアンフェアに感じた。
ゲーム評としては参考になった。
コメントありがとうございます。
本記事で言及したいのは「ポケモンGO」⇔「テクテク」の話だったため、「Ingress」には言及していません。
また「Ingress」は飽くまで技術ベースの土台であり、位置情報ゲームにおけるゲーム性に関して「ポケモンGO」は全く異なる体験を提供していると考えています。
「テクテク」は後発である以上、位置情報ゲームとして「ポケモンGO」に対する独自の回答を示す必要があったという認識ですね。
日本ならではの細かく区切られた「区画」を塗りつぶすアイデアは良かったので無理にAR、RPGに拘る必要は無かったのでは?
参考にしていただけて嬉しいです。
ありがとうございました。
こんにちは、初めまして。テクテクテクテク終了関連の話題で辿り着きました。
ドラクエGO、、、ドラクエは海外ではそれほど人気が無いので、海外で高い利益を出すのは難しいかもですね。
国内ではどうかというと、おじさんおばさんでもピカチュウだけは案外知っていて、そこらへんがプレイ導入へのとっかかりとして中高年の入りやすさになってると思うのですが(いくら流行ってるとしてもジジババが全く知らない萌ゲー作品には拒絶反応起こして飛びつかないので)
ドラクエはというと、プレイ経験者以外にはちょっと親和性が薄いかなとは思います。
なので「日本人」「20〜40代あたりのゲーム経験者」「ポケモンGOをあまりやってない上に、ドラクエファン」あたりがターゲットになるんですかね。
スライムもゲーマー以外の一般的知名度は案外低そう。
あと、今のスクエニが関わるとすると重課金ゲーになりそうな悪寒も……。(꒪д꒪II
ぽぽぽ様、コメントありがとうございます。
ディズニーと肩を並べて世界で戦えるポケモンというコンテンツが異常過ぎますね。
逆に考えればDQGO経由でドラクエファン層を増やせる流れも考えられます。
お子さんと一緒に遊べるのも大きなメリットなんでしょうね。
ドラクエの場合の入り口は「ポケモンGO」が鍵ですね。2Dで同時起動しやすくして「ドラクエ」のタイトル名を知っている人なら試しにやってみる人も多いと思うので。
ゴプラみたいな外部デバイスでも手軽に楽しめるのが理想ですね。これを期に「あるくんです」が復活したら超楽しそう。
基本的なターゲットは「ドラクエファン」になると思います。堀井さんが乗り気でDQ12として出せれば完璧に話題はつかめます。
「DQライバルズ」をプレイしてて思いますが課金バランスは比較的ぬるいと思いますよ。
DQMSLでは炎上後はバラマキまくりましたし、DQMSPは買い切りで素晴らしい完成度だったり。
何にせよ妄想の域を出ない話題ですが楽しみです。
ありがとうございました。