100人対戦バトルロワイヤルゲームの草分け的存在『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』がSteam上で初のセール販売を実施している。2017年3月の配信開始以来頑なにセールを実施してこなかった同作がセール販売に至った経緯を考察してみる。
セール情報
実施されているのはPC・Xbox One版の販売数が5,000万本を突破し、モバイル版との合計プレイヤー数が4億人を超えたことを祝う記念セール。全プラットフォームを対象とすると毎日8,700万人以上のプレイヤーがゲームにアクセスしているとのこと。
セール期間は2018年7月6日まで。期間中は通常価格3,300円の33%オフ、2,211円で販売される。
ユーザー数推移
セール実施理由について販売数・プレイヤー数突破に伴う記念セールとしているが、背景には競合である『フォートナイト』の影響があることは間違いない。
『フォートナイト』はPS4, Xbox One, PC, スマホ, Switch向けに無料配信されている人気バトルロイヤルゲーム。PvPモード提供開始以降、徐々にユーザーを獲得し2018年1月時点での同時接続数は200万人を突破。僅か1ヶ月後の2月には140万人増の340万人を記録するなど飛ぶ鳥を落とす勢いでプレイヤー数を伸ばし続けている。Switch版の配信開始に伴う更なる増加も予想される。
対するPUBGのプレイヤー数は2018年1月の323万人をピークに減少を続けており、直近24時間の最大同時接続数は128万人。グラフを見ても右肩下がりの様子がよく分かりTwitchの視聴者数も数十倍の差が生まれている。
明暗が分かれた理由
同じバトルロイヤルとして見事に明暗が分かれた形だが両者の差は何だったのだろうか。
対応機種
『フォートナイト』が現行のコンソール機全て(PS4, Switch, Xbox One)で楽しめるのに対し、『PUBG』を遊べるコンソール機はXbox Oneに限られる。この理由として『PUBG』を手がける韓国のオンラインゲーム開発スタジオ「Bluehole」はMicrosoftと(時限)独占契約を締結しているため。現在のところPS4で発売される予定は全く無い。今月に実施されたE3でもXboxコンソール独占が改めて強調されている。ちなみにSwitch版の発売はスペックの問題から望みは限りなく薄い。
コンソール機で遊べない人はPC版ーという考えもあるがそのハードルは一般人には非常に高い。そもそも日本におけるデスクトップPC所有率は2016年時点で20%未満であり、割合は減り続けている。(参考:【NRCレポート】パソコン・スマートフォンなどの情報機器 Part1.情報機器の利用率)そんな中でVR Readyレベルの高スペックが求められる『PUBG』を遊べるゲーミングPCを持っている人間は10%にも満たないだろう。そもそも遊ぶ「選択肢」を有している母数が違い過ぎる。
無料
価格も重要な分かれ目だろう。両ゲーム共に課金によってスキン入手の特典が用意されているが基本的なゲームプレイ料金が異なる。『PUBG』は3,300円の製品購入が必須なのに対し『フォートナイト』は基本プレイ無料。スマホゲーム同様の課金形式を採用している。気になれば「試しにDL」して遊ぶことが出来るお手軽さも大きなポイントだろう。
しかも、課金有無による差はゲーム内「衣装」「モーション」等の入手に限られており強さには全く影響しない。課金するほど強くなるP2W形式でないため、無料でストレス無く楽しむことが出来る。
チーターの有無
『PUBG』はチート行為の蔓延も大きな問題となっている。代表的なものではプレイヤー位置の把握や自動照準機能、装備や回復アイテム入手など不正行為がとにかく多い。1ヶ月のBAN件数は100万件以上に達しており、チートが原因でまともに遊べない状況が続いていた。そんな中、3月には通常通り遊んでいたプレイヤーまで誤BANされる事件も発生。多くのユーザーから反感を買うことになった。
対する『フォートナイト』はチートはほぼ無い状況。開発元のEpic Gamesはチーター根絶を最優先事項に掲げており、不具合の対応も早い。しかし、代わりに『フォートナイト』ではソロバトルなのにプレイヤー同士で協力を行う「チーミング行為」が非常に目立つ。この点は今後の改善に期待したいところ。
アップデート頻度
『フォートナイト』は運営の行動が素早く、アップデート頻度も非常に多い。毎週何かしらの追加武器・衣装やルール変更、バランス調整が行われ飽きることが無い。ユーザーの意見のフィードバックも積極的に行っており、ストレス係数の高い武器を出したと思えばすぐに中止して元に戻す等、柔軟な対応をしている印象が強い。
この「試しに導入」が出来るのもアーリーアクセス版の大きなメリットだろう。チャレンジ性の高いアイテム・武器も存在し、思いもよらない使用方法が発見されることも多い。
ゲーム性
同じバトルロイヤル系だがゲーム内容は『PUBG』と『フォートナイト』で大きく異なる。最大の違いは『フォートナイト』には「クラフト(建築)」要素が存在することだろう。この要素によって『フォートナイト』はより動的で戦略性の高いゲームに生まれ変わっている。
軽い
ゲーム内容は「建築」以外にも多くの差があるものの『フォートナイト』で共通して言えることはノリ・動作・フットワークが非常に「軽い」。ある種「バカゲー」として楽しめるし、Switchのスペックでさえサクサク動く。価格(無料)、対応機種、ゲーム性などすべての要素が相まって気軽に遊べる雰囲気が生まれている。
eスポーツ
「フォートナイト ワールドカップ」が2019年開催!誰でも参加可能で賞金総額約100億円 #フォートナイト https://t.co/GspyEE5nta pic.twitter.com/TDmDfR6M1T
— EAA!! FPS News (@EAA_tw) 2018年6月13日
ゲームの雰囲気とは裏腹にeスポーツとしての本気度は他のゲームを凌駕している。Epic Games自らが2019年に開催する「フォートナイト ワールドカップ」の賞金総額は約100億円。ただでさえ勢いが凄い『フォートナイト』人気に拍車を掛ける内容となっている。サーバーの増強・運営にも力を入れており、未来が非常に明るい。
感想
半年前にセールが行われていれば状況も違ったと思うが『PUBG』は既にオワコン化しつつあると思う。今回セールを実施したことで今後もセールを行う、割引率が高くなる可能性を作ってしまったこともブランド的にはマイナス要素だろう。いっそのこと潔く無料化してしまった方が話題にもなり起死回生の一手となり得る。また、「PUBG」側が「フォートナイト」を訴えている裁判の結果も気になるところ。ソニーのクロスアカウント問題のようにユーザーの不利益にならない結果が望まれる。
無論、『PUBG』には『PUBG』の良さもあると思うので今回のセールを機にプレイしてみるのもアリだと思う。ユーザーが多いうちに是非楽しんで欲しい。
コメント
単純な話、fortniteの方が見てて面白いから
pubgは見てて面白くない、というかスーパープレーみたいなのがないから見てて飽きる
そら見てて面白いと思う方にユーザーが移っていくのは当然
Ninja、Myth、Tfueみたいなプレイヤーたちがいるのも強い
正直pubgはもう絶対にfortniteに逆転はできない
コメントありがとうございます。
確かに建築要素によってスーパープレイが出やすいですね。
地味なPUBGよりも実況向きで配信人気が高いのも優れているポイントですね。
プレイヤー数は今後離れる一方でしょうね。
ありがとうございました。
おもしろい視点だなぁと思いました。
無料で誰でも遊べて、カジュアルなフォートナイトの注目度が上がっていくのは必然ですね。
ただ、現状日本だとまだまだ大会が開かれていないので、日本でもesoprts普及を目指すのであればぜひ大会も開いてほしいところです。
PUBGは日本でもPJSのような長期的な大会を開いているので、プロゲーマー達が収益化しやすい環境になっている分、esportsの観点から見るとまだPUBGのほうが強いのかなという印象を受けました。
コメントありがとうございます。
仰る通り日本でのe-Sports展開は業界全体的に弱いですね。
高額賞金が景表法、風営法、賭博法等に抵触する疑いが枷になってしまっている状況だと思います。
収益化の観点では賞金総額100億円の大会が開かれる等「これから」動きが活発化する感じですかね。
今後の展開に期待したいです。
ありがとうございました。
やはり無料という点が大きく影響しますね。料金があると初心者は近寄りがたいしハズレだったらどうしようといった葛藤が生まれますよね。
僕ははメタルギアが好きなで、その影響で
目立たずにこっそりやっていく感じのPUBGが好きなのですが、もっと人が増えてほしいところです
コメントありがとうございます。
無料なら「まず遊んで判断」が出来ますし、それ自体が宣伝になるんですよね。
現在行われているDBDの無料体験も良いアプローチだと思います。
MGSのようなステルス要素では地味なPUBGに軍配が上がりそうですね。
プレイヤー数の増加に関してはPUBG無料化等の「フォートナイト」層を取り込む施策が必要でしょう。
ありがとうございました。