【ラセター退社】『ズートピア』放送の裏で進む社会のディストピア化

ディズニーの人気アニメ『ズートピア』が6月15日、金曜ロードショーにて放送された。同作の製作総指揮も務めたジョン・ラセター氏がディズニーを退社することをご存知だろうか。海外でスキャンダルが相次ぐ「セクハラ騒動」と文化への影響を考えてみる。

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騒動の発端

「セクハラ問題」の告発が相次ぐきっかけになったのはアメリカの映画プロデューサー「ハーヴェイ・ワインスタイン」氏のセクハラ疑惑報道。2017年10月5日、ニューヨーク・タイムズ紙で報じられたことに端を発し次々と被害者が声を上げ、加害者が続々と明らかになっている。ムーブメントは「#Me Too」のハッシュタグと共に広がりを続け、続々とセクハラ・性的暴行被害の告白が行われている。

ラセター氏の退社

そんな中明らかになったのが米ディズニーのアニメ部門トップ、ジョン・ラセター氏のセクハラ行為。ラセター氏は女性スタッフに対してハグやキス行為、身体的特徴の言及などを行っていたことが報道。昨年11月から有給期間に入り、2018年内に退社することが発表された。

問題点

ジョン・ラセター氏が行ったセクハラ行為は当然ながら社会として許されることではない。しかし、同士がディズニーを救った実績やアニメ業界に与えた影響を考えると文化的損失は限りなく大きい。問題点をまとめてみる。

現・ディズニーの礎

NHKで2014年に放送された「魔法の映画はこうして生まれる~ジョン・ラセターとディズニー・アニメーション」を見ていれば現在のディズニーがラセター氏によって成り立っていることがよく分かる。代表的な監督・製作総指揮作品を挙げるだけでも下記の通り。

  • 『トイ・ストーリー』(監督・ストーリー原案・モデリング・アニメーションシステム開発)
  • 『トイ・ストーリー2』(監督・ストーリー原案)
  • 『モンスターズ・インク』(製作総指揮)
  • 『ファインディング・ニモ』(製作総指揮)
  • 『カーズ』(監督・ストーリー原案・脚本)
  • 『トイ・ストーリー3』(ストーリー原案・製作総指揮)
  • 『カーズ2』(監督・ストーリー原案・キャラクター原案)
  • 『シュガー・ラッシュ』(製作総指揮)
  • 『アナと雪の女王』(製作総指揮)
  • 『シュガー・ラッシュ』(製作総指揮)
  • 『ベイマックス』(製作総指揮)
  • 『ズートピア』(製作総指揮)
  • 『ファインディング・ドリー』(製作総指揮)
  • 『リメンバー・ミー』(製作総指揮)

要するに現・ディズニーで彼が関わっていない作品は存在しない。カットシーンを確認してはハエ叩きの様に問題点を潰し周り作品の品質を維持、方向性を正していた。来年に公開される『トイ・ストーリー4』の製作総指揮・ストーリー原案も務めていたがセクハラ問題により降板。退職によってディズニーの未来が大きく動いたことは間違いないだろう。

ポリコレ棒

今回の件は社会全体で進むポリティカル・コレクトネスの影響も大きい。本来は日本で言うところの「看護婦」が「看護師」になる等、差別・偏見を無くしていく活動を指すのだが、この活動が現在は「武器」として利用され始めている。Twitterで女性蔑視の発言をしようものなら身元を特定され晒され、社会全体で過剰に叩く方向に傾いている。今回のラセター氏のセクハラ問題も退社に追い込まれるほど大きな問題だったのだろうか。

会社としてセクハラ問題を起こした社員が退職させるのは自然な流れという意見もあるだろう。しかし、同氏がアニメ文化に与えた影響を考えれば余りに大きな損失であったことは間違いない。

行き過ぎた平等

筆者は基本的なポリティカル・コレクトネスの概念については賛成である。しかし、行き過ぎた思想と管理は弊害をもたらす。既に洋画では白人・黒人・アジア人キャストを織り交ぜた形で制作されるのが基本となっており、人種に配慮した作りになっている。アメリカが多人種国家であることからも傾向は強いのだろうが、作品の舞台設定によっては当然違和感も生じてくる。「作品」の質に重きを置く以前に各種人権団体に「配慮」する必要があるのだ。

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日本では昨年末の「ガキ使」の黒人メイク騒動も大きな話題となった。上記記事にまとめた通りこの騒動で得をしたのはブロガー「バイエ・マクニール」氏であり、黒人が直接不快感を示して抗議した訳ではない。ポリコレの概念・目的は一部の層によって利用されている側面も存在する。

行き着く先

行き過ぎたポリコレがたどり着く先は全ての表現・行動に対して監視の目がつきまとうディストピア社会だろう。差別的な発言は権利団体や「正義」を掲げる一般市民によって監視され、少しでもはみ出す内容があれば粛清・ネット私刑が躊躇なく行われる。現時点でも過激な発言をしたTwitterアカウントは簡単に炎上し、関係各所に飛び火している。

重要なのは多くの場合、ネット上で騒いでいるのは直接被害を受けていない無関係な人間であること。黒人差別について騒ぐのは白人であり、作品関係で騒ぐのは今まで作品を知らなかった層であることも多い。自分は「正しいこと」をしていると信じ、その後の影響については考えていかったりする。

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日本も他人事ではない

今回の「セクハラ騒動」はアメリカを中心に広がりを見せているがディストピア化については日本も他人事ではない。最近話題になったのは原作者のヘイト発言を巡るアニメ化中止騒動だろう。この件に関しては擁護のしようが無いが、作品内容とは別に作者の人間性、作中表現に対する配慮が求められる世の中になりつつある。

感想

個人的には「セクハラ騒動」自体はバカバカしいとしか感じない。業界として問題を抱えていることは事実だろうがラセター氏の件は退社するほどの事件とも思えず、映画界のセクハラ騒動の生贄にされた状況にも思える。「#LoseLasseter」のハッシュタグを撒き散らしてまでラセター氏の復職を拒んだ人たちの多くは「アニメ」作品に対する愛など持っていない連中である。ファン層の支持も届かず退陣にまで追い込まれた状況は残念で仕方がない。「正しさ」だけを追求する社会の流れ自体疑問でもある。

良い方向で考えればラセター氏退職後のディズニーから新しい世代が生み出す尖った作品も見れるかもしれない。良くも悪くも大衆向けな作品にまとまりがちなディズニーから「特定の層」に強く訴えかける色濃い作品が生まれるならそれも興味深い。何にせよまずは来年公開の「トイ・ストーリー4」の出来次第といったところだろうか。楽しみに待ちたい。

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