大阪府北部で2018年6月18日朝に発生した地震(震度6弱)による事故が相次いで報告されている。そんな中、高槻市の小学校に通う9歳の女子児童がプールの壁に挟まれ死亡する事故が起きてしまった。事件の詳細、事前に防げなかったのか情報をまとめてみる。
被害情報は下記記事を参照。
目次
概要
【速報】大阪地震 高槻市で9歳女児が心肺停止 プールの壁にはさまれhttps://t.co/7FbjPYqrRs
— 地震・ニュース速報@Yahoo!ニュース (@YahooTopicsEdit) 2018年6月18日
18日朝に発生した地震で大阪府高槻市の寿永小学校に通う9歳の女の子児童が倒壊したプールの壁に挟まれ心肺停止。その後、午前9時4分に死亡が確認された。
問題点
一般的に地震等の自然災害によって与えられた損害は不可抗力として免れる。しかし、構造物の設置・保存に瑕疵がある場合は責任が発生する。
倒壊現場
倒壊現場と見られる「寿永小学校」プールの塀は上記のGoogleストリートビューで確認可能。
プールの壁ってどういう事かと思ったけど、こういうことか。。。緑色が通学路?歩道。その壁の上半分が倒れてくるなんて
こんなん予想だにせーへんよな。 pic.twitter.com/hZIaudT3ZV— ゆかちん (@yukakerori) 2018年6月18日
描かれている絵柄も報道と一致する。
同様の事件
同様のブロック塀構造の事件は熊本地震でも発生したばかりだった。この件ではブロック塀の所有者である益城町の社会医療法人理事長が過失致死傷害容疑で刑事告訴されている。
建築基準法
建築基準法施行令 第六十二条の八では、ブロック塀について次の基準を満たすよう定められている。
- 高さは、二.二メートル以下とすること。
- 壁の厚さは、十五センチメートル(高さ二メートル以下の塀にあつては、十センチメートル)以上とすること。
- 壁頂及び基礎には横に、壁の端部及び隅角部には縦に、それぞれ径九ミリメートル以上の鉄筋を配置すること。
- 壁内には、径九ミリメートル以上の鉄筋を縦横に八十センチメートル以下の間隔で配置すること。
- 長さ三.四メートル以下ごとに、径九ミリメートル以上の鉄筋を配置した控壁で基礎の部分において壁面から高さの五分の一以上突出したものを設けること。
- 第三号及び第四号の規定により配置する鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、縦筋にあつては壁頂及び基礎の横筋に、横筋にあつてはこれらの縦筋に、それぞれかぎ掛けして定着すること。ただし、縦筋をその径の四十倍以上基礎に定着させる場合にあつては、縦筋の末端は、基礎の横筋にかぎ掛けしないことができる。
- 基礎の丈は、三十五センチメートル以上とし、根入れの深さは三十センチメートル以上とすること。
引用元:あなたの家は大丈夫?地震の倒壊被害から学ぶブロック塀の構造と耐震性
建築基準法違反
上記記述・画像を確認していただければ分かる通り、倒壊したブロック塀は現行の建築基準法に違反している。07年の改正建築基準法施工前に建てられている可能性が極めて高い。違反箇所を一つずつ確認してみよう。
高さ
ブロック塀の高さは道路面から「土留めを含めた」ブロック塀の頂部までを指すため、2.2mを大幅に超えている。
厚さ
高さは2mより高いため壁の厚さは15cm以上必要となる。画像を確認する限り恐らく10cm~15cmといったところ。
鉄筋
画像では不明なので省略。
控え壁
長さ3.4m以内ごとに基礎と塀と一緒に作る必要があるが存在しない。
基礎
そもそも基礎につながっていない野積み施工。
防げなかったのか?
今回のケースが現行の施工基準を満たしていない建築なことは明らかだと思う。問題は今回の事故を防げなかったのかという点に尽きる。熊本地震でのブロック塀事故のケースでは周辺住民からも「危険だから塀を撤去して欲しい」と訴えがあったらしい。日本全国で大きな地震も相次ぐ中、同様の訴えがあったのかが一つの争点となるだろう。
また、今回のケースは小学校の通学路であり小学校自体が避難指定地域でもあるため行政の安全管理責任も問われるはず。改修、取り壊しが行われていれば不幸な事故は防げていただけに尚の事悔やまれる。
再発防止に努めてほしい
同様の事件があったにも関わらず防げなかったことが本当に悔やまれる。メディア各所は被害者周りの情報を無闇に掘り下げるのではなく、再発防止のための情報周知を是非徹底して頂きたい。亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。