『いぬやしき』感想:正義と悪「トロッコ問題」と奥先生の心の闇

先月アニメも最終回を迎えた奥浩哉の漫画『いぬやしき』の感想と考察。併せてアニメ版の感想も述べる。

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どんな漫画?

『いぬやしき』は『GANTZ』で知られる奥浩哉の漫画。宇宙人によって機械の身体となった老人「犬屋敷壱郎」と同じく機械の身体となった高校生「獅子神皓」の戦い、活躍、苦悩を描いた作品。

原作は2017年7月に最終回を迎え、アニメは同年12月に最終回が放送された。漫画は全10巻完結で好評発売中。

楽しみ方

現代版MARVEL

本作は機械の身体となった「犬屋敷壱郎」「獅子神皓」による物語だが2人は機械化した時点で銃撃、ハッキング、飛行、治癒といった人智を超えた能力を身に着けている。現代日本を舞台に神となった2人が人の命を奪い、救い、恨まれ、感謝されながら揺れ動く物語が最大の魅力。現代日本の実状に照らし合わせた超人モノと考えると非常に楽しめる。

正義と悪

本作が典型的な「スーパーマン」と異なるのは「犬屋敷壱郎」と対照となる「獅子神皓」の存在だろう。獅子神は人の命を「奪う」ことでしか自分の生を実感できず、逆に犬屋敷は人の命を「救う」ことでしか生を実感できない。

加えて重要なのは獅子神は純粋悪では無いという点である。獅子神はいわゆるソシオパス(社会病質者)であり、良心・罪悪感を持たず、法を軽視し、自身の身の回りにしか興味がない。そのため日本人の命を無差別に奪うことに何ら躊躇が無い一方、母親の命は救い、想い人に説得されて命を救うなどしている。

トロッコ問題

2人は機械化した時点で身体的・能力的に「人ではなくなっている」訳で本作の善悪を考える上で人間社会の法を当てはめる事自体が誤っている。最終的にはヒロは「全人類を救った英雄」であり、「救った命の数 >>>>> 奪った命の数」となっている。これは倫理学の思考実験「トロッコ問題」にも似ている。

無論、獅子神は「助けるために犠牲にした」訳では無いので単純比較は出来ないものの、獅子神は許されるかという問いを読後考えてみることも本作の楽しみ方の一つだと思う。

心の闇

作品内から滲み出る奥先生の心の闇も大きな魅力である。作中では2ちゃんねらーの末路やミヤネ屋の某司会者がヘッドショットを決められるシーン、一般人の命が無慈悲に奪われる様子が描かれている。

奥先生の2ch嫌いは「GANTZ」の頃から有名だが本作もネラーの描き方に強い意志を感じる。「漫画の中だったら自由に人が○せる」という蛭子能収の格言を高い画力で忠実に実行しているのも大きな魅力だろう。

感想

『いぬやしき』については否定的な意見も多いので記事をまとめてみた。前述の「心の闇」に同調できるか否かが本作の評価の大きな分かれ目だと思う。個人的には「やりきっている感」が非常に清々しく、見ていて読んでいて非常に気持ちが良い。後味の悪さよりも爽快感が勝っている。

アニメ版については「良く出来ている」と思う。声について否定的な意見もあるがさほど気にならない。強いて言えばアニメ演出としての物足りなさは残念なところ。特に2人の空中戦闘シーンはもっと頑張って欲しかった。EDは内容的にもピッタリだし聴いていて浄化される良曲だったと思う。

2018年4月20日には実写版も公開されるが、実写化はこの上なく向いている作品なので期待したいところ。まだまだ収まらない「いぬやしき」旋風に今後も期待したい。

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