本日から劇場公開されたアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を早速観てきたので速攻レビュー。感想としては『君の名は。』を期待して観に行くと肩透かしを喰らうであろう凡作となっている。
なお本レビューでは公式サイトで公開されている範囲のネタバレが含まれる。事前知識ゼロで観たい方はご注意頂きたい。
どんな映画?
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は『まどか☆マギカ』『物語シリーズ』で知られるシャフト制作の劇場アニメ。
元は1993年の岩井俊二監督の同名のドラマが原作となっている。このドラマ版は『世にも奇妙な物語』の後番組として放送された『If もしも』の一編として放送予定だった映像作品。
この『If もしも』という番組は1話毎に話が分岐し2通りのストーリーを描く方式の異色作だったため、ドラマ版は「もしも」の2つの物語が展開する内容となっている。
感想
感想としてはとにかく微妙である。全ての要素が全く噛み合っていない。
SFとして
https://twitter.com/uchiage_movie/status/898044887580332032
本作はジャンルとしてはSFになる。公式サイトでも情報公開されている通り主人公はある日「時間を巻き戻し」そこから「If もしも」の物語が展開されるのだが、この「もしも」が「もしもボックス」レベルのご都合主義なのである。
同様にタイムリープをした作品としては『時をかける少女』や『シュタインズゲート』といった作品が存在する。しかしどちらも制限が存在し、「運命に抗う」ための時間跳躍だった。本作は最初のタイムリープこそ熱い展開なのだが、以降は回数を重ねる毎に「何でもありじゃねぇか」と緊張感がどんどん薄まっていく。
そして時間跳躍に対する主人公の驚きも薄いし、「もしも」システムを活かす面白いアイデアは花火くらい。SFとして純粋に面白くない。
ドラマ版を踏襲する意味
https://twitter.com/uchiage_movie/status/892209234959400960
そもそもがドラマ原作の『If もしも』の2パート分けのためのシステムでしか無かったものをそのまま持ってきて面白くなるはずがない。ドラマ版は40分だし「主人公が勝ったら or 親友が勝ったら」の三角関係を描くだけで十分だが「もしも」部分だけを過大解釈してご都合主義にしてしまった点はクソである。
また、ドラマ版は実写で小学生の演技する初々しい感じと甘酸っぱい青春感が良かったのに、アニメ版で中1にしたことも完全に劣化でしかない。アニメ表現的にも下心と生々しさが出て別物になってしまっている。
本作のターゲットは『君の名は。』層なのだから原作ファンへの配慮など不要なのである。『時をかける少女』同様に「もしも」「花火」「駆け落ち」のアイデアだけ頂いて性格、キャラも現代風に変更して再構成するべきだったと思う。挿入歌の方針も『君の名は。』と真逆となっている。これはあり得ない。
恋愛ものとして
https://twitter.com/uchiage_movie/status/897713149780135938
恋愛映画としては薄いし人を選ぶ。正直『君の名は。』の足元にも及ばない。
ヒロインである「なずな」は男性目線なら艶めかしさを楽しめると思うが女性目線だと嫌いな人はとことん嫌いなキャラだと思う。エピソードもありがちで弱いし引っ越すのを嫌がる背景が描かれていないから同情する余地が無い。
感情移入という点で問題なのは「唐突なキスシーン」(ネタバレ伏せ字)である。突然過ぎて観ていて笑ってしまった。そこは展開とシチュエーションを考えて欲しい。
ターゲットは誰なのか?
「このままではアニメは生き残れないと思った」。
【New】新房昭之総監督と川村元気Pが岩井俊二監督の傑作ドラマのアニメリメイクに挑戦した理由は? #打ち上げ花火 https://t.co/fVRiz49pCS
— BuzzFeed Japan News (@BFJNews) August 16, 2017
本作が作られた経緯には間違いなく『君の名は。』の存在がある(企画は本作が先だが同じ川村元気)。だからこそ絶対に外さない過去の名作ドラマを使って『時をかける少女』同様に成功パターンのアニメ映画化を狙ったのだと思う。
しかし間違いなく本作は上記2作の足元にも及ばないレベルで失敗している。どこを狙ったのかブレブレな脚本がとにかく酷い。声優に着目しても主役、ヒロインは「菅田将暉」「広瀬すず」という俳優・女優を使っている一方でその他の登場キャラは「宮野真守」「浅沼晋太郎」「梶裕貴」といった声優たちで固めている。
本作をアニメ化した意味は何なんだったのか。頑張って『時かけ』レベルの現代版リメイクをして生まれ変わらせて欲しかった。
シャフト好きなら観ても良い
本作は正直「恋愛映画」としても「SF映画」としても人に勧められない。唯一観ても良いのはシャフト好き(アニメ好き)の人だけだと思う。(シャフト臭は薄い)あとは神前暁の楽曲は非常に良かった。
あまり人にお勧めできる要素は無いが興味があれば観ても良いレベルの凡作だと思う。
映画:打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? | |
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監督 | 新房昭之 武内宣之 |
脚本 | 大根仁 |
原作 | 岩井俊二 |
出演者 | 広瀬すず 菅田将暉 宮野真守 松たか子 花澤香菜 浅沼晋太郎 |
音楽 | 神前暁 |
制作会社 | シャフト |
配給 | 東宝 |
公開 | 2017年8月18日 |
コメント
どうでもええけど、打ち上げ花火は君の名はの前から企画して作っとるんやで。デタラメ書いて恥かかんようにな
の様、コメントありがとうございます。
企画の前後については把握していますし、記事内で「企画は本作が先」と明記しています。
ブーメランになるので記事をちゃんと読みましょう。
記事を読んで分かる通り本記事の趣旨は企画の前後については問題視していません。
リメイクとしての問題点が本投稿の趣旨です。
コメントありがとうございました。
制作に君の名は関係ないだろw
意識してることは間違いないですね