『OneShot』感想:UndertaleになれなかったメタSF

PC用アドベンチャー『OneShot』をプレイした感想。一応ネタバレ無し。

どんなゲーム?

『OneShot』日本語版公式トレイラー

『OneShot』はLittle Cat Feet開発のパズルアドベンチャー。オリジナル版はRPGツクールで作られており、2017年9月に公式日本語版がSteamでリリースされた。

本作はネタバレが面白さに大きく影響するゲームである。本作に少しでも興味があり、いずれプレイしたいと思っている方はブラウザバックし事前情報無しでのプレイを推奨する。

魅力

メタ要素

本作最大の特徴はPCゲームという強みを存分に活かした「メタ要素」である。プレイヤーと本作の主人公「ニコ」は別の存在であり、ゲーム中に「プレイヤー」に対して話しかけたり、ゲーム自体がPCに影響を及ぼしたりする。イメージとしては『Undertale』『Doki Doki Literature Club!』を想像してもらうと良い。ただ本作は「雰囲気ゲー」としての部分も大きく上記2作と比べると見劣りすることは確かなので注意して欲しい。

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世界観・物語

本作が前述した2作と大きく異なるのはSF要素を備えた世界観と物語だと思う。ゲーム内世界は悲壮感に包まれており、プレイヤー(ニコ)が「救世主」として行動しなければ簡単に破滅を迎えてしまう。世界構造や「プレイヤー」と「ニコ」について考えさせる要素も多い。全体的にゲームとしての文字量も多く、本作は動かせる「ノベルゲーム」として考えたほうが良いかもしれない。

その分残念なのが溢れ出る「お使い感」である。本作は基本的に「物語を進めるため」に移動し、謎を解くゲームプレイとなっている。『Undertale』のように戦闘を楽しんだり、ボス戦を楽しむようなゲーム性は介在していない。無駄に広く迷いやすい世界を「たった一つ」の「用意された解答」を探し出すのは作業感が強くゲームとしてつまらない。元がRPGツクールだと考えると許せる部分も多いが残念だった。

ニコ

本作が人気を博している理由は物語・世界観以外に主人公「ニコ」の存在が大きい。とにかく可愛い。猫耳の見た目も然ることながら、プレイヤーに対して不安げに語りかける姿や年齢設定、感情を揺さぶる物語など本作では「ニコ」の魅力が大きく掘り下げられている。本作の評価の分かれ目は「ニコ」に対する捉え方・印象で大きく変わるはず。

感想

評価が非常に高く、期待してプレイしたのだが正直ゲームとしてはつまらない。本作に介在する「パズル要素」は荒削りでマップ構造も分かりづらい。多くのプレイヤーは攻略サイトを調べつつ遊ぶ形になると思う。肝心の物語も予想を大きく裏切る展開も無く、「ニコ」に対して感情移入が出来ないと心も揺さぶられない。元がフリゲということもあり、本作の評価ははっきり言って過剰評価な状況だと思う。

追加されたEDも「OneShot」(一度きり)というタイトルを半分裏切る内容でもあり、無理にハッピーエンドとするのも良いとは思えない。プレイヤーの選択、ケツイの意味が失われてしまう。本作のコンセプト、伝えたかったことは何なのか。より煮詰めた形にして欲しかった。PC、ウインドウという特性を活かしたゲームプレイは感心するし頑張っていると思う。その分「ゲーム」として楽しめる作品に仕上げて欲しかった。本作は「体験」を味わい、「ニコ」に感情移入することでようやく成り立っている。リプレイ性は低くゲームとしては成立していない。

とはいえ本作が唯一無二の魅力を備えている点も確かである。価格を考えれば1本映画を見る感覚では楽しめることも間違いない。Steamではセール時は588円と破格になるので興味を持った方は是非プレイしてみて欲しい。

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コメント

  1. 匿名 より:

    アンダーテール至上主義者さんこんにちは!、君に一つ良いこと教えてあげるよ、評価に過剰評価なんて物は存在しない、大多数が評価されたゲームは名作であり、それを過剰評価と認識するのは君がこのゲームの世界には合わなかったのと、アンダーテールになれなかったゲームと書いてある時点で相当視野が狭いと思うよ!

    • タコッケー より:

      コメントありがとうございます。
      「過大」じゃない誤字ツッコミかと思いきや大多数からの評価は正義論ですね。
      大多数が評価しているから名作という論理はそれこそ思考停止ではないでしょうか。
      また、世界観が合わなかったーの理屈は「面白さ」の存在否定にも繋がります。
      「本ブログについて」でも説明している通り「面白い」「面白くない」は存在し、単なる嗜好が合わなかったという話ではありません。
      記事内で説明している通り『OneShot』はおつかい感が強く謎解き要素も練られた内容ではありません。
      アドベンチャーゲームとしての質は2018年現在では古臭いレベルになっています。
      また、『Undertale』の名を出したのはメタ要素における比較とPV数牽引のためです。
      『OneShot』の魅力を伝えたいならばご自身のブログで「ここが面白い!」と解説したほうがファンも増えますしお金も稼げます。ご検討下さい。
      感情を伴ったコメントを頂けて嬉しいです。うちの実家も熱海近いので親近感湧きます。ありがとうございました。

  2. 匿名 より:

    うわーっ。
    記事主って性格悪いですね。
    しかも、●●になれなかった とかいやみったらしい。しかも、PV数牽引のためとか。
    雰囲気ゲーのどこが悪いんだろうか。
    褒める部分がたくさんあるはずなのに、批判ばっかり。

    • タコッケー より:

      コメントありがとうございます。
      性格に問題無いとブログ稼業なんて出来ませんよ。
      きちんと記事にたどり着いて頂き、読んで頂けただけで嬉しい限りです。ありがとうございます。
      雰囲気ゲーという点は認めちゃうんですね。
      記事タイトルの通り批判記事なので当然です。
      ありがとうございました。

  3. 匿名 より:

    アンテと比較するのは正しいと思います、方向性がすごく似ている。それでいて向こうは戦闘やなんや(適当)で面白みがアップしてるし、oneshotよりいいゲームかもしれないです。
    でも雰囲気ゲーは悪くないですよ、さっきの方が言ってたように。アクションとか練られた謎解きがなくとも素晴らしいと私が思うゲームはたくさんあります。ここら辺はそれこそ嗜好の話になりますが、「嗜好が合う」人がいるのも事実です。
    FPSやっといてアクション要素が無いと文句を言うようなものではないでしょうか。そこら辺も織り込んで批判記事にしているなら余計でした、すみません(´・ω・`)

    • タコッケー より:

      コメントありがとうございます。
      メタ要素の観点で類似してますよね。
      しかし、『UNDERTALE』に関して「戦闘やなんや」程度しか面白さを挙げられない辺り、未プレイあるいはゲームに対する理解が無さすぎます。
      『UNDERTALE』はメタスコア92点、国内外で数多くの賞を受賞している化物作品です。
      「いいゲームかも」の次元ではなく比較対象にすらなり得ません。
      また、雰囲気ゲーには特有の良さがある点については同意します。
      しかし、『ICO』や『INSIDE』のように作品が神ゲーと称される域に達するためには謎解きを含むゲーム性、音楽、シナリオ等のゲームの構成要素全体の質の高さが求められます。ここをクリア出来ない限り作品は「良ゲー」止まりとなってしまい、本投稿はその差を議論の対象としているのです。
      そして「嗜好が合う」はオタクは使ってはいけない文言ですね。「Oneshot」の方が良いゲームと心の底から信じるならば「好みの問題」などと個人の矮小な価値観に依存する枠に当てはめてはいけません。それこそ「面白さ」の存在を否定することに繋がってしまいます。
      FPS, アクションの例えに関しては「Oneshot」がADVである以上、良質な謎解きとゲームとしての楽しさが求められるという考えです。
      ありがとうございました。

      • 有難迷惑ノイローゼ より:

        「戦闘やなんや(適当)」=「長文になるからここには書かないor書くのが面倒くさいorそれだけの文章力がない」

        理解していないわけではないでしょう。明文化していないことは存在していないというわけではない。コメ欄は論文ではないはず。

        • タコッケー より:

          「理解してないわけではない」に関しては貴方の憶測でしかありません。その推測に至った論拠はありますか?
          また、明文化出来ない時点で作品に対して「語る」というベースが出来ていないのです。
          まず作品レビューの土台を築く必要がありますね。
          ありがとうございました。

  4. 匿名 より:

    この記事主からTheBeginner’sGuideの『作者の友達』的オーラを感じて凄いぞ……!
    似てるだけのものを紐づけて『こういうジャンルはこうすればウケる』という持論を抱えてるタイプ。
    そういう考えを否定はしないし、モノ売る仕事なら偉いかなって思いますけどね。
    でも折角なら是非ブログじゃなくてGameMakerStudioとかRPG Maker 2003にぶつけて欲しいですね。もったいない。
    自分はTobyやSalvatoやMathew達の友達ではないんで「作者」としての彼らの本位は
    わかりかねないんですけど、一人のプレイヤーの身分としてこいつうぜーなって思いました。以上です。

    • タコッケー より:

      コメントありがとうございます。
      「The Beginner’s Guide」は創作活動と承認欲求がテーマの作品なので例えとして微妙ですね。
      Coda氏は創作活動は「逃げ」の姿勢がありますし結果として持論が作品に繋がっていません。
      なぜかブロガー扱いされてますが個人アプリ開発してますよ。あと「モノづくり」してる人なら偉い理論も謎です。
      作者の気持ちを少しでも理解したいのであれば、貴方もゲーム開発してみることをお勧めします。作者の「やりたかったこと」と制限が見えてきて理解が深まりますしお金にもなります。
      開発者の名前がスラスラ出る辺りゲーム好きな方とお見受けしました。
      率直な感想ありがとうございます。

  5. にょ より:

    このブログは共感できました。ほかのブログやレビューを見ましたが過大評価されているとしか思えませんでした。まともな人のブログを見ることができてよかったです。

    • タコッケー より:

      にょ様、コメントありがとうございます。
      良いゲームだとは思いますが、2019年現在プレイして絶賛するのは違う気がしますね。
      それだけゲームの質も時代と共に上がったということでしょう。
      ありがとうございました。

  6. 名無し より:

    面白さなんてどんなに理屈を並べても個人の主観でしかありません
    もう少し大人になりましょう

    • タコッケー より:

      コメントありがとうございます。
      このサイトについて」くらいは読んでください。
      「面白い」を「主観」と考える時点で「面白さ」の存在を否定していますね。
      作品全てを「好みの問題」と捉えるのは「面白さ」の価値分析と提起を繰り返してきた作品文化の流れを理解していません。
      オタクにならずとも一度ご自身で「ものづくり」してみることをお勧めします。
      ありがとうございました。

  7. パスタ より:

    今回の批評、とても楽しく拝見させていただきました。^^
    僕自身まだoneshotが未クリアというのもあり、このゲーム自体の感想は控えます。
    そこで質問なのですが、結局のところタコッケー様の考える「面白さ」とは何でしょうか
    面白さとは、一個人のみの感想ではなくどれだけの人にその作品が支持されているのか
    だと思っています。しかしタコッケー様は別の考え方を持っているようです。なので
    いくつか記事を拝見させていただきました。が結局「面白さ」がなんなのかそれが
    多数決以上に公平な考え方なのか、おつむがありんこサイズの小さい僕には理解できません。拙い文章ですが返信お待ちしております^^

    • タコッケー より:

      パスタ様、コメントありがとうございます。
      記事読んで頂きありがとうございます。
      「面白さ」に関してですが単純な「人気」で考えた場合、正しい評価が難しいと思います。特に「ゲーム」というジャンルにおいてはその傾向が顕著で名作でも「売上」が振るわないケースや逆パターンも多い。(FF15,大神etc)
      「面白さ」について詳しく知るには「荒木飛呂彦の漫画術」や岡田斗司夫著「オタク学入門」「遺言」辺りがお勧めですね。
      荒木氏の言葉で言うところの「黄金の道」を考え続けることが本来オタクが持つべき使命とも考えられます。
      飽くまでベースは個人が抱く感想なのですが「なぜ」面白いと感じたのかを分析し続けることで「面白い」を作る共通項が導き出せる。
      更に言えば「自分」が面白いと感じるポイントの共通箇所に気づけるかもしれない。
      この「個人の嗜好」に依存しない形で分析できるかが大きな鍵ですね。
      その前提で最近思うのは「味音痴」ならぬ「面白さ音痴」もあるのではという話。
      幼少期など原体験でしっかりと「面白い」作品を体験出来ていないと思春期以降に作品に対する考え方が凝り固まってしまい分析が難しくなるのでは。
      加えて言うならば「公平」である必要も無いです。面白い(面白くない)の「理由」を説明できて論ずることが出来ればOK。
      このコメント欄に関しては本来OneShotがゲームとして面白い理由を論ずるべき。それを単なる個人攻撃にしてしまっている時点でオタクとしては駄目なんですよ。
      あと個人的なアドバイスですが自分を卑下するような喋り口は今すぐ辞めましょう。それが真意でなくとも癖になりますしプライドを持って生きるべき。
      ありがとうございました。

  8. ノイローゼ より:

    各人がプレイした際の面白さという意味では、多数決あるいは平均化が最良だと考えます。分析しようが何しようがその時面白いと感じた事実は変わりないはずです。主観的なものなので、感性が違うと合わないでしょう。

    ゲームとしての出来の良さという意味での「面白さ」は必ずしもそうではないでしょうね。少数派がゲームの良さを発見することもあるでしょう。こちらの「面白さ」はどちらかというとゲームの制作者にとって意味があると思います。もちろんプレイヤーにとっても、限りある資金でより楽しめそうなゲームを探す際には便利です。

    タコッケー氏は極力後者で記述しようとしている感がありますが、なにぶん論文ではなくチラ裏ブログですからちょくちょく前者が混ざっていると思います。

    本人ではないので的外れかも知れませんが。

    • タコッケー より:

      購入者ベースで考えるならばメタスコアやSteamレビュー等の指標が参考になることは間違いありません。
      ただレビューという観点ではその「主観」を如何に排除し説明できるかが重要だと考えています。
      つまり「僕はこの作品好きだった」ではレビューする意味が無くて「ここが面白かった(面白くなかった)」を説明する必要がある。
      「面白さ」の分析に関しても仰る通りゲーム制作する上での糧になる部分ですね。
      作り手を目指す人は前提としてオタクである必要があるという話。
      ブログ記事に関しては読みやすく&PV稼ぐために感情織り込んでますが、ベースは主観排除の作品分析です。
      記事に関しては数字が正義な考えですね。
      ありがとうございました。