四畳半神話大系の新OP・EDがシナリオアートに改悪された理由

2017年1月からTOKYO MXにてTVアニメ『四畳半神話大系』の特別放送が開始された。今回はそのOP・ED変更された理由改悪だと思う理由について解説したい。

四畳半神話大系について

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『四畳半神話大系』は森見登美彦原作による、2010年にノイタミナ枠で放送されたテレビアニメである。監督は「マインド・ゲーム」「ピンポン」などで知られる湯浅政明が手がけている。

アニメーション表現と構成が高く評価され、第14回文化庁メディア芸術祭でもTVアニメ史上初の大賞を受賞している。

OP・EDが差し替えられている

今月から開始した特別放送では以下の通りOP・EDが差し替えられている。

オープニングテーマ エンディングテーマ
本放送 迷子犬と雨のビート
/ ASIAN KUNG-FU GENERATION
神さまのいうとおり
/ やくしまるえつこ
特別放送 迷子犬と雨のビート
/ シナリオアート
ラブマゲドン
/ シナリオアート
特別放送一話目では新OP後に浅沼晋太郎による解説と合わせて本放送版「迷子犬と雨のビート」も流れた

また、曲と共にOP・EDアニメーションも湯浅政明率いる「サイエンスSARU」による新OP・新EDに差し替えられており、新EDには湯浅政明監督の4月公開映画『夜は短し歩けよ乙女』のキャラクターも登場している。

変更された理由

アニメーション

変更点

OPアニメーションは絵コンテ的には同じ内容となっている。しかしポップな曲調になったのに合わせてポップ感溢れるエフェクト演出が画面に加えられている。

EDアニメーションは様変わりしている。本放送版では四畳半の間取りを模した部屋の見取り図が細胞分裂のように増えたり動き続ける特徴的なアニメーションだった。

特別放送版では前半は京都の地図、星が降る映像の中から明石さんと私、黒髪の乙女と先輩がそれぞれ左右から出てくる。その後『四畳半神話大系』のキャラクターと『夜は短し歩けよ乙女』のキャラクターが入り乱れる映像となっている。

考察

OPは曲調に合わせただけの些細な変化なので割愛。

ED内容は『四畳半神話大系』と『夜は短し歩けよ乙女』の関連性を説明する内容となっている。第2話の特別放送後のインタビューで湯浅政明氏が

『四畳半』と同じような世界で、パラレルワールドみたいな意識でやっている

と答えていたとおり、『夜は短し歩けよ乙女』には『四畳半神話体系』の舞台キャラクター達が多く登場するらしい。

EDを確認してみると同じ場所(京都)を示す地図映像と両作のキャラクター達が入り乱れる映像となっている。星が降るシーンも左からは「明石さん」と「私」、右からは「黒髪の乙女」と「先輩」と平行世界から主人公が飛び出している演出がされている。まさしく『夜は短し歩けよ乙女』との世界観の繋がりを表現したEDになっていることが分かる。

楽曲

楽曲の提供元

まず『四畳半神話大系』の音楽プロデューサーを確認すると「佐野弘明」とある。大島ミチルの劇中曲を除いたOP・EDテーマ楽曲はソニーミュージックエンターテイメントから提供されている。

各OP・EDテーマ曲のレーベルを確認するとソニー・ミュージック・レーベルズの社内レコードレーベルであるキューンレコード(現キューンミュージック)となっている。

特別放送のスポンサー

今回の楽曲変更にはソニーミュージックとしての意向が反映されていることがわかった。ここで『四畳半神話大系』特別放送時のCMを確認すると「キューンミュージック」の楽曲CM及び『ポケモン・ザ・ムービーXY&Z ボルケニオンと機巧のマギアナ』のBD・DVDのCMが放映されている。

キューンミュージックは分かるが『ポケモン』映画は何故か?と調べると映画BD・DVDの販売元は「ソニー・ミュージックマーケティング」となっている。

つまりキューンミュージック(ソニー・ミュージック)としては「シナリオアートを売り出したい」ためスポンサーになる代わりにテーマ曲の変更を申し出た可能性がある。

改悪だと思う理由

こういった会社間都合の取引はよくあることなので、それ自体に問題はない。楽曲自体も比較的良い曲だとは思う。しかし『四畳半神話大系』というアニメにおいてはミスマッチだと判断せざるを得ない。

作品イメージと異なる

シナリオアートによる『迷子犬と雨のビート』はとてもポップである。対してアジカンの『迷子犬と雨のビート』は陰鬱とした印象を受ける。

そして『四畳半神話大系』もまた陰鬱な大学生の物語なのである。正直シナリオアートの楽曲からはノリノリで恋愛も楽しんでいる大学生の印象を感じてしまう。何度再生しても「他人の恋路を邪魔する黒いキューピット」が主人公のテーマ曲とは思えない。

ED曲の入り方が良かった

『四畳半神話大系』の内容はループものである。各話の終了時に時間が巻き戻る演出が挟まれ、その後にやくしまるえつこの『神さまのいうとおり』が流れる。この曲のイントロの印象がとても強く、アニメーション内容も本編に関わる四畳半世界を見事に表していた。

楽曲は演出の一部

そもそもアニメ視聴者にとってOP曲、ED曲は思い入れがとても強い。アニメ中の挿入曲となれば尚の事思い入れが深まる。

本作の最終話におけるOP・ED演出もシナリオアート楽曲の場合印象が全く異なってしまう。楽曲変更によって作品の演出まで変更されていることは悪手にほかならない。繰り返し観続けてきたファンにとっては違和感を感じてしまい視聴に耐え難い。

正直ファン層はBDも持っているから困りはしないのだが、初めて観る方たちには「勿体無い」と感じてしまう。特別放送で『四畳半神話大系』を知り、原曲に興味を持った方は是非先にDVDを借りて観て頂きたい。

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コメント

  1. 迷子犬 より:

    自分はシナリオアートのcoverも嫌いじゃないけどな。もちろん本家の方が好きだけど、まー人それぞれ思う事あるだろうけど改悪は言い過ぎだと思う。

    • タコッケー より:

      迷子犬様コメントありがとうございます。
      まず前提として本記事で述べているのは「好み」の問題ではありません。
      どちらがより作品にマッチしているか。
      「作品価値」を上げているかという観点で記事を書いています。
      もちろん迷子犬様のようにシナリオアート版も「好き」という人が居ることは重々承知しています。
      しかしそれは『四畳半神話大系』という作品において「シナリオアート版」が良いという理由の説明にはなっていません。
      迷子犬様も「本家のほうが好き」と述べている以上、どちらかを選ぶならアジカン版なのだと思います。その点は同意見で嬉しいです。
      恐らく「悪」とまで言う必要はないという論旨だと思いますが本ブログ「おもそん」の主義思想が「面白さの存在」である以上、より「面白い」ものはアジカン版でありシナリオアート版は『四畳半神話大系』という作品価値を落とす「悪」という認識です。
      コメントありがとうございました。