宮﨑駿が引退宣言を撤回し長編映画に復帰した理由【新作映画は鉄砲侍?】

5月19日宮﨑駿が引退宣言を撤回し、長編映画製作を発表したことは広く知られていると思う。この発表に対しネットでは「引退詐欺」「○年振り○回目」「嘘つき」など安直で心無い言葉が溢れている。この現状に対して物申したいので本記事を執筆する。

『風立ちぬ』での引退宣言は本物だった

大前提として『風立ちぬ』での引退宣言は本物であったことを伝えたい。事実スタジオジブリは2014年『思い出のマーニー』公開後に制作部門を解散している。

風立ちぬ』という作品自体も宮﨑駿の作家性が色濃く出た異色の作品である。作品全編に渡って宮崎自身の思想・趣味性が強く投影されており、主人公である堀越二郎の声も師弟関係にある庵野秀明が担当している。

漫画版『風立ちぬ』の内容および対談からも宮崎自信の飛行機に対する並々ならぬこだわりが伝わってくる。本作は間違いなく宮﨑駿が初めて趣味に振り切って製作した映画であった。

「この漫画はいわば趣味として描いていたもの」

出典:宮崎駿・半藤一利「自分の映画で泣いたのは初めてです――『風立ちぬ』戦争と日本人――零戦の誕生、関東大震災……ただ懸命に生きた時代の証言」、『文藝春秋』第91巻第9号、文藝春秋、2013年8月1日、 95頁。

宮﨑駿が試写会で「自分の作品で初めて泣いた」と語っていることからも『風立ちぬ』という作品への思い入れは深く、自身の体力との兼ね合いもあり本当に引退する決心があったことは間違いない。

[amazonjs asin=”4499231671″ locale=”JP” title=”風立ちぬ”]

なぜ『引退宣言』を撤回したのか

引退宣言の撤回を紐解く鍵は2016年11月13日にNHKで放送された『終わらない人 宮﨑駿』というドキュメンタリーの中にある。このドキュメンタリーは宮﨑駿が引退宣言後、新作短編アニメーション『毛虫のボロ』を自身初の3DCGアニメとして制作する過程を捉えたものとなっているのだが、この映像の中で初めて「長編企画 覚書」が出てくる。

この「長編企画」の案が出てくるまで宮﨑駿は純粋に『毛虫のボロ』に全力を注いでいる。ちなみに『毛虫のボロ』を製作している3Dチーフは2015年11月8日NHK放送『庵野さんと僕らの向こう見ずな挑戦 日本アニメ(ーター)見本市』にも出てきた櫻木優平。『毛虫のボロ』はジブリ美術館で7月に公開予定。

ドワンゴの川上会長に見せられた実験映像

そんな若い力と新しい技術に挑戦している最中ドワンゴの川上会長にとある実験映像を見せられる。それはAI学習で作られた「人体がゾンビのように這いずり回り移動するデモ映像」であった。

それを見た宮﨑駿は「極めて不愉快」「生命に対する侮辱を感じる」と非難しており、その後一人になってからも「地球最後の日が近いって感じがする」「人間のほうが自信がなくなっている」などと世の中に対して憂えた言葉を口にしていた。そして8月はじめに長編映画企画書を書き上げている。この流れからも「地球最後」に向かう世の中に対して何かアクションを起こさなければと長編企画を書き上げたと考えられる。

新作映画は『鉄砲侍』?

鉄砲侍公式サイトより

新作映画は上記の流れから考えてジブリ恒例の「生命賛歌」テーマの内容になるとは思う。また、引退後の宮﨑駿の動向を確認すると戦国漫画「鉄砲侍」が連載予定だったことが分かる。この連載は結局、ジブリ美術館や上記CGアニメに追われて無期限延期となってしまったため内容は分からない。しかし『ナウシカ』や『風立ちぬ』の漫画から映像化の流れを考えても『鉄砲侍』が映像化される可能性は高く、公式サイトのインタビュー記事を読むと『鉄砲侍』の筆を取ったのは2013年9月なので思い入れもさぞ深いと思われる。作品テーマとしても「生命」に関わる内容にもピッタリだと思われる。

公開は2019年?

気になるのはそもそも完成するのか?公開時期が気になるのだが映像を確認すると

  • 2016年7月 シナリオ IN
  • 2017年前半 コンテ
  • 2017年後半 打ち合わせ→作画期間
  • 2018年 作画期間
  • 2019年半ば ★完成

となっていた。以前ニュースで鈴木Pが「2019年は誰かが勝手に書いたこと」と言っていたが大嘘であり、駿自身が覚書に明記している。今は絵コンテを書いている真っ只中なのだろうか。

2019年には宮﨑駿は78歳。その時も元気なのか気になるが我々にできることは楽しみに待つことだけである。オリンピック開催前に映画館で観れることを期待したい。

スポンサーリンク
レクダングル(大)
レクダングル(大)

シェアする

フォローする



スポンサーリンク
レクダングル(大)