金魚電話ボックス撤去問題で露呈した日本人の著作権認識の甘さ

奈良県大和郡山市に設置されていた「金魚電話ボックス」が著作権トラブルとなり、撤去する流れになっている。今回の件について的外れな意見も多く見られるので問題点をまとめてみる。

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概要

話題となっているのは「金魚の町」として人気を集めていた奈良県大和郡山市、柳町商店街の「金魚電話ボックス」。電話ボックスの中で金魚が泳ぐ幻想的なビジュアルがインスタ映えするとして人気を博していた。しかし、この作品が山本伸樹さんが作るアート作品「メッセージ」に酷似しているとアーティスト本人から指摘。解決策を協議したが合意に至らず、商店街は撤去を決定した。

問題点

今回の騒動に関して著作権を主張する山本伸樹氏を一方的に悪者にする心無いコメントも多い。問題点を再確認してみよう。

妥協案を拒否

今回の件は経緯自体が入り組んでいるので誤解する方が多いのも仕方がない。全体像が分かりやすいのは山本伸樹氏が商店街向けに渡していた上記の記事。記事によると同氏が要求しているのは下記の2点のみ

  • 金魚電話ボックスが山本伸樹の著作物であることを認める
  • オリジナル作品である緑の電話機への付替えを認める

アーティスト自身は商店街に対して「著作物使用料」「著作権侵害の慰謝料」は請求していない。電話機を付け替え、山本伸樹氏の作品として展示し続ける解決法が存在したにも関わらず商店街側がそれを拒否した形となる。

損害賠償請求について

前述の主張の中に下記の主張を確認できる。

万が一、合意いただけなかった場合は、提訴を考えています。民事となるため、いままでの著作物使用料、著作権侵害慰謝料を請求せざるを得ません。

これを単に金目的と勘違いし騒いでいる無知な方も居るが民事裁判として争う以上、請求できるのは下記の3点のみとなる。(出展:著作権侵害をされた場合の民事・刑事における対応策

  1. 侵害行為の差止請求
  2. 損害賠償
  3. 名誉回復措置

1について商店街側は既に撤去を決めているので差止請求は意味が無い。3の名誉回復措置は著作人格権侵害時のみ適用なので対象外。となると民事として争う以上、告訴可能なのは2の損害賠償のみ。決してお金目的ではなく、アーティストとしての権利を守るために動いている。

商店街の対応

今回の問題に対して商店街側は電話ボックスの撤去を決めたが4年間設置していた事実は揺るがない。アーティスト本人から内容証明を送られ、本格的に訴えられる前に撤去を決定する商店街側の対応の遅さも意図的で悪意が感じられる。観光資源として活用し続け利益を享受していたのだから、誠意ある対応を見せるべきだった。日本人的な「臭いものに蓋をする」精神で撤去した感が否めず、撤去理由が伝えられていないことも不信感が拭えない。

今回の件に関してはFacebookを確認すると商店街理事長と大筋の合意は出来ている。にも関わらず理事会で「著作権は認めない」結論が出た辺り、商店街組員全体で反対意見が相次いだのだろうか。「著作権」に対する日本人の認識の甘さが露呈した状況と言える。

著作権とは

今回の件を「誰でも思いつく」として著作権自体が無効だと考える意見も幾つか見られる。その趣旨で言えば2016年の五輪エンブレム問題はどうなるのか。あれこそ幾何学的な記号を組み合わせだだけの「誰でも思いつく」案となるではないか。筆者はエンブレム問題は佐野氏の擁護派であの件はデザイン・著作権認識に対する日本人の認識の低さが露呈した事件だと思っている。

今回の盗作疑惑がある山本氏の作品「メッセージ」について同氏はFacebook上必然性を述べている。最終的にそのデザインに至った経緯が納得できるものであれば、「盗用」だと問題にはならなかったと思う。あのレベルの作家のオリジナリティさえ認められなければ、現代美術自体が成立しなくなる。

毎日新聞の報道

今回の件に関する毎日新聞のミスリードも非常に気になる。山本氏が1年以上に渡り交渉を行い、自腹で福島から通ってまで解決策を協議してきた経緯に全く触れず、京都造形芸術大学の頓珍漢なコメントを載せる始末。

電話ボックスと水槽を組み合わせた作品は(他にも)複数存在する。学生は他者の作品を一切参考にしていない

というのは「うちは著作権を軽視しています」と主張しているのと同義であり、一美術大学としてあり得ないと思う。

商店街連合の主張も納得が出来ない。「譲り受けたから勝手に認められない」ならば提供元に確認すれば済む話であり、指摘を受けた時点で撤去等の対応も出来たはず。そもそもアーティスト自身が展示の方向で話を持ちかけてくれているのだから、撤去して全く同じものを作れば良いだけの話ではないか。意味がわからない。

感想

恐らく商店街としては著作権違反をしていた「事実」をもみ消す為に「なかったこと」にする道を選んだのだと思われる。観光資源の少ない商店街にとって集客の目玉とも言えた展示だっただけにダメージは大きいだろう。著作権に対する認識が甘く「過去の過ち」を認められない日本人としての国民性が悪い方向に働いてしまった残念な事件だったといえる。また、SNSの傾向としてありがちな個人攻撃の傾向も酷かった。

撤去を機に再注目が集まっている今こそ、逆境をうまく活用したPRをして欲しいところ。今後の柳町商店街に期待したい。

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コメント

  1. えけせてぬ より:

    これは単なる感情論。法律家の意見は違うよ。

    • タコッケー タコッケー より:

      えけせてぬ様、コメントありがとうございます。
      執筆時点で感情が伴っていた点は否定できません。
      著作権部分に関しては違反じゃない意見もあるみたいですね。この辺は裁判の結果を待ちましょう。
      ただ、本記事の主旨は商店街・市側の対応の是非が主です。
      結果として商店街自体に悪いイメージが付き、人気観光資源の撤去など大きな打撃となっているのは事実です。
      設置時点で類似作品・権利関係を確認してれば今の事態になっていないと思うので残念ですね。
      ありがとうございました。

  2. ゆっしー より:

    弁護士さんの見解としては著作権違反には当たらないらしいですよ。弁護士さんに問い合わせてその回答もぜひ追記してくだはい。

    • タコッケー タコッケー より:

      ゆっしー様、コメントありがとうございます。
      著作権違反にはならない意見もあるみたいですね。
      個人的に弁護士の知り合いも居ないので代わりにお願いします。ついでに記事にしくれると助かります。
      ありがとうございました。

  3. 匿名 より:

    「過去の過ち」を認められない日本人

    うわぁ・・・

    • タコッケー タコッケー より:

      コメントありがとうございます。
      その文脈だけ捉えると政治的な思想とか含んでそうですけど特に意図してません。
      「昔ながら」「お役所仕事」的な表現を盛り込みたかった感じです。今読み返すと微妙ですね。
      ちなみにタイトルの「日本人」も興味惹かせるために盛り込みました。
      ありがとうございました。

  4. 誰? より:

    法律的な見解の参考

    芸術的な見解の参考

    ちょっと山本の分が悪い

    • タコッケー タコッケー より:

      誰?様、コメントありがとうございます。
      わざわざURLありがとうございます。参考になりました。
      他人様のブログになるのでリンク外しておきます。
      山本氏の提訴は裁判に勝つため~というよりも芸術家の権利を守るためだと考えています。
      前述の通り本投稿の主旨は「著作権」がメインではないです。
      そこは裁判所の判断を待ちましょう。
      商店街・市としての対応がダメでは?お互いにとって損失にしかなってないのでは?
      という観点でのコメントもお願いします。
      ありがとうございました。

  5. takuya より:

    ん? 山本氏はNTTから電話ボックスの使用許可をとってるの?
    まさか無断で使って「我の芸術作品でござい!」てやってないでしょうね。
    佐野のオリンピックロゴは誰でも思いつく学生レベルのデザインだけど、
    一応全部自分で考えた100%オリジナルでしょう。
    渋谷の写真はパクってたけど。

    山本氏の作品も商店街電話ボックスも100%オリジナルじゃない。
    山本氏やあなたが著作権を持ち出すなら
    NTTが持つ著作権、この場合は意匠権がどうなってるか、
    その許可の有無を記事にしないとね。

    「著作権に対する認識が甘い」と断罪しながら
    NTTの意匠権について無視するあなたこそ
    「著作権に対する認識が甘い」んじゃない?

    • タコッケー タコッケー より:

      takuya様、コメントありがとうございます。
      まず意匠権と著作権は別です。内容から察するに混同している印象があります。
      意匠権の権利発生は登録主義であり、無方式主義の著作権と異なります。
      今はWebでも調べられるので「NTTが持つ」と仰る出願番号を是非教えてください。

      もし、単なる著作権の話をしているのであれば、「電話ボックス」が著作物にあたるかは裁判所の判断待ちになると思います。
      親告罪のためNTTが著作権侵害として提訴すればの話ですが、日本の著作権法では著作物を下記の通り定義しています。
      「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」
      電話ボックスが創作的な表現をしたものとは個人的には考えていません。

      コメント内容全体からアーティスト軽視の意思が読み取れて非常に残念です。
      過激なタイトルで気分を害してしまったようで申し訳ございません。
      目を引くタイトルじゃないとクリックさえして貰えないので意図的に煽っています。
      おかげさまでコメント欄も賑わい大変嬉しいです。
      最後までお読み頂きありがとうございました。

  6. 匿名 より:

    なんとなく検索したら本稿に辿りつきました。
    突っ込みどころが多いですが、一部コメントさせて頂きます。

    美術大の、
    “電話ボックスと水槽を組み合わせた作品は(他にも)複数存在する。学生は他者の作品を一切参考にしていない。”
    とするコメントは、

    ・著作権法はコンセプトそのものを保護対象としてない。
    ・例え学生の創作物に山本氏の権利が及ぶとしても、依拠性の要件を満たさない。

    という意図のものではないでしょうか?
    著作権をよく理解されている方のコメントと見受けられます。

    “というのは「うちは著作権を軽視しています」と主張しているのと同義であり、一美術大学としてあり得ないと思う。”
    という貴方のコメントには同意できません。

    • タコッケー タコッケー より:

      コメントありがとうございます。
      美大コメントに関してそれは都合の良い解釈過ぎるのではないでしょうか。
      該当記事で載っているのは引用部分と「オリジナルは11年製作のテレ金」という主張だけです。
      なぜその解釈に至ったのか意味が分かりません。
      繰り返しになりますが大学自体の品格問題は本投稿の主旨とずれる部分です。
      「著作権」の話ばかりで残念です。
      ありがとうございました。