7月20日から公開を開始した細田守監督新作「未来のミライ」を観た感想。タイトル通りネガティブな内容なので気になる方はブラウザバックすること。
どんな映画?
「未来のミライ」は『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』で知られる細田守監督の最新作。甘えん坊の男の子”くんちゃん”と未来からやってきた妹”ミライ”が織りなす不思議な物語。
OP・EDテーマは山下達郎、声優は星野源、麻生久美子、役所広司、福山雅治といった豪華キャストが担当している。
問題点
公開初日の初回上映で観に行った感想だが、正直言って残念過ぎる内容の映画だった。理由を一つずつ説明していこう。
面白くない
「未来のミライ」視聴感想
試写会というわけで無料で見せてもらってる立場で申し訳ないが、あまり面白くなかったってのか正直な感想。タイムトラベルものの世にも奇妙な物語を見てるような感じ。
学生の身ゆえ批判的な感想になったけど、1度育児を体験された方々にはおもしろいのかもしれない。
— ヒトミン (@duckiehitomin) 2018年7月12日
映画で最も重要なのは演出や音楽や画作りではなく脚本である。本作は致命的に脚本の内容が悪い。開始冒頭から終わりに至るまで驚くほど起伏が存在せず、盛り上がるポイントは全く存在しない。その上、作品全体を通して伝えたかったであろう「テーマ」はいちいち言葉を通じて説教のように観客に伝えられる。物語には暗喩と明喩が必要だが、本作に置いては明喩しか行われていない。対象年齢を小学生辺りに設定しているのだろうか。かと思えば『ワンピース オマツリ男爵と秘密の島』レベルのトラウマシーンも存在して子供向きとも思えない。
詰まるところ細田は延々と自身の人生経験・趣味を映像化し続けているのだろう。『サマーウォーズ』では妻の実家帰省時の大家族の様子と『ぼくらのウォーゲーム』。『おおかみこどもの雨と雪』では母性とケモショタ性癖。『バケモノの子』では父性といった具合に。今作は焦点を「子供の成長」「兄弟」に当てつつ、家族の繋がり・歴史も入れ込んだわけだが、各エピソードは繋がりが存在せずぶつ切り状態。作品全体を通じたメッセージになり得ていない。感覚としては『世にも奇妙な物語』で短編集を観た状態に似ている。
短編集でも各エピソードが面白ければ救いがあるのだが、どれも薄っぺら過ぎて全く印象に残らない。若干のSF味を入れた単なる日常でしかなく、ショートフィルムならまだしも映画化するような内容ではない。監督の作家性を犠牲にして「観客」が喜ぶ内容・演出を考え続けた『君の名は。』とは雲泥の差があり、本作は細田守監督のホームビデオに留まっている。
くんちゃんの声
いよいよ本日から公開になる細田守監督最新作。気になっているのは、主人公くんちゃんの声(上白石萌歌)。予告で見る限り、まったく子供の声に聞こえない。女性の声にしか聞こえない。なにか理由が?単に下手なだけ?本編を確認せずばなるまい!
「#未来のミライ」予告3 https://t.co/IfbTkoJJhf— 師範代 (@eigadojo) 2018年7月19日
本作の主人公である”くんちゃん”の声も非常に気になる。演じているのはタレントの上白石萌歌。予告ですら分かる通り、まったくもって子役の声質ではない。起用の理由には『おおかみこどもの雨と雪』で姉の萌音が出演したこと、事務所である東宝芸能の圧力も考えられる。これを忖度なし純粋にオーディションの実力で勝ち取ったと思えるなら脳内お花畑か細田の耳がやばい。
子供の描き方
未来のミライ観たけど、これ子供嫌いは見るの苦痛過ぎるぞ
— Soleil (@Soleil0717) 2018年7月20日
本作の子供(くんちゃん)の描き方は露骨に子供の嫌な部分が溢れ出ている。事あるごとに「好きくないの!」とワガママを言い、おもちゃを散らかし生まれたばかりの妹を殴ろうとする。「それが子供」というメッセージも分かるが解決法が酷い。ご都合主義のタイムリープが毎回発生し、親ではない第三者・環境によって”くんちゃん”が強制的に学ぶことを強いられるのだ。後半の駅でのシーンなど見ていて可愛そうでしかない。
丁寧に子育てする母親の苦労と喜び「生命」を描ききった『おおかみこども』との差は歴然。本作は全体的に都合が良すぎて作品内にキャラクターが「生きている」感じが全くしない。アニメーションとして子供の所作こそ丁寧だが、子供は一瞬で”未来のミライ”を理解できないし「言葉」でメッセージを伝えられても響かない。日々の生活の中で少しずつ学び、大人になっていく過程をすっ飛ばして「タイムリープ」を解決法に強制的に成長を描くのはどうなのだろうか。
SNSの反応
公開初日に観に行く熱心なファンからもイマイチと行った声が相次いでいる。
「未来のミライ」@日比谷。絵本映画。子供が見える世界と子育てあるあるを見せたいのか。親子で観る事のみを想定して作ったのか。くんちゃんの声は絶望的に合ってない。謎の東京駅が楽しかったからいいけど。最初のエヴァの予告編がMAXだった。
— 味噌塗りランドセル (@30randoseru) 2018年7月20日
未来のミライ見てきた
これは結構見る人を選ぶ気がする
個人的には細田さんの過去作の方が面白い— かぼっち (@kabocchi_lol) 2018年7月20日
正直エヴァの予告以上の感情の動きが無かったよ…。未来のミライはターゲット絞りすぎてる、子持ちの親しか楽しめない。5歳の主人公ってんだからある程度予想してたけど想像以上にストーリーがグダる。5歳って分かってても観るのがつらい。地図はもうダメかもしれない…。
— りょす (@ryossideriver2) 2018年7月20日
未来のミライ観てきたけど、アニメーターに好き勝手作らせたらこうなったみたいな映画だった。いいとこ山ほどあるのにころしあってる感じ。細田監督めちゃめちゃ才能あるのに、自由にやると発揮されないんだなぁ
— 天才もとじ (@10c02) 2018年7月20日
未来のミライ観てきたけど、すごい微妙だった。山がない話だったなー。映像は凄かったけど。何より、くんちゃんの声が合ってなさすぎて。。。でも高校生くんちゃんとひいじいちゃんがかっこよすぎた!!そこは良かった!!
— さく (@3blossom21) 2018年7月20日
細かい感想(ネタバレ含)
「映画」としてはお世辞にも褒められる作品ではなく、凡作よりの駄作に留まっているというのが正直な感想。細田守監督好きで気になる方は観ても良いが「この夏最大の感動作」では間違いなく無いし、8月公開の『インクレディブル・ファミリー』『ペンギン・ハイウェイ』『僕のヒーローアカデミア』の方が楽しめると思う。エンタメ性は非常に低く「感動」ポイントも「子育て経験あり」な方が自分の人生経験に重ねた上での感動に留まる。
参考までに映画を観た細かい感想(ネタバレあり)を箇条書きで載せておく。映画を観た方以外は注意して欲しい。
~ネタバレ回避~
未来のミライ、上映前にシンエヴァの特報が不意に流れてきて、映画の内容がまるで頭に入ってこなくなったので退館。、
— になもり (@Khara4205) 2018年7月20日
細田守「家族愛をえがいてファミリー向けの映画を作るぞ」
おおかみこども「せや!ケモショタ入れたろ!」
バケモノの子「せや!ケモノとショタ入れたろ!」
未来のミライ「せや!ケモショタ入れたろ!」— しぐま (@SignalMass) 2018年7月17日
- 一番盛り上がったのは予告の『シン・エヴァンゲリオン』2020年公開
- 『ペンギン・ハイウェイ』予告の方が泣ける
- くんちゃんの声が終始耳に馴染まない
- 明らかに「子供」の声じゃない
- クソガキ感
- 家から出ないシーンが延々と続く
- 唐突過ぎるタイムリープ展開
- 唐突過ぎるケモショタ化(無意味)
- 未来から来たミライを一瞬で理解する4歳児
- アイデンティティと化した手のアザ
- 未来から来た理由が「雛人形を片付ける」
- だるまさんがころんだイベント(寒い)
- 同時間軸にミライちゃんは2人存在しない中途半端なSF感
- 上流家庭の生活を延々と見させられる
- ただの日常+αで一向に盛り上がらない
- 自分で片付けさせない教育方針
- 「しつけ」は描かれない
- 一向に上がらないキャラ好感度
- ご都合タイムリープ
- 音楽で間を持たすが単調なまま
- 「好きくないの」
- ようやく外に出たと思ったら近所の公園
- タイムリープと説教の繰り返し
- 短編集でええやん
- 生命力を感じない優しい世界
- 未来の東京駅のホラー展開
- イヌカレー的映像
- トラウマ化間違いなしの新幹線
- どうせ元の時間軸に戻るやろーと危機感を感じられない
- 「くんちゃんはミライちゃんのお兄さん」を強制的に言わせる
- タイムリープ・OZ・ウォーゲーム的演出
- カタルシスが無い
- ↑感情移入の導線が設定されていない
- =感動できない
- 「私達まで繋がって」「些細なことが積み重なって」←言いたいことは分かるが作品を通じて伝えられてない
- ↑だから言葉で無理やり表現しているのが最高にダサい
- 発端が「青色のズボンを履きたくない」だったり「雛人形を片付けていない」だったりしょうもなさ過ぎる
- 『サマーウォーズ』の何かよく分からんけどヤベえ…みたいな展開に出来なかったのか
- タイトルコール時の虚無感
- 山下達郎の歌は最高
今後に期待
商業主義路線に舵を切った新海誠監督と作家性(?)の方向に進み始めた細田守監督でくっきり明暗が分かれた印象を受けた。細田は演出は素晴らしいものを持っているが原作・脚本を書いちゃ駄目なタイプの監督だと思う。宮崎駿と鈴木敏夫、新海誠と川村元気のように作家性を上手くコントロールする有能なプロデューサーが何とか付いてくれないだろうか。今後の作品に期待したい。