雨宮天サイン入りポラロイド転売は無問題:当選取り消しと法的根拠

雨宮天のサイン入りポラロイドの転売行為がネット上で話題となっている。感情論で叩いている人も居るが法的には問題が無いので理由をまとめる。

概要

事の発端は「声優アニメディア」7月号のプレゼントとして用意された「雨宮天のサイン入りポラロイド」。9月21日にTwitter上で当選者からの当選報告があった後、フリマアプリ「メルカリ」で36,000円での転売行為が確認された。これに対し、声優アニメディア編集部はTwitter上で当選の取り消し及びプレゼントの返還を要求。大きな話題となっている。

無問題な理由

雨宮天ファンが転売行為を叩く気持ちも分かるが、今回の一連の行為は法的には問題が無いと思われる。

規約<法律

声優アニメディアでは当選商品の転売行為を禁止している。当選通知の画像から下記の記載が読み取れる。

尚、本プレゼントの「オークションへの出品・営利目的での転売等」は、商品をご提供頂きましたメーカー・声優様のご意思に反しますので、厳禁とさせて頂きます。

「オークションへの出品・営利目的での転売等」が発覚した場合は、ご返却頂きます

記載内容に則って考えた場合、当選者は営利目的での転売を行っており「返却」する必要がある。しかし、この記載が飽くまで「声優アニメディア」を発行する株式会社学研プラスが定めた内容でしかない。法治国家である日本では当然ながら一企業が定めた規約よりも法律が優先される。

民法333条

まず、懸賞の当選商品は出版社から当選者に発送・到着した時点で所有権が移転している。

(物権の設定及び移転)
第176条  物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

当選者は懸賞に応募してる時点で意思表示を行っており、出版社側も(条件付きだが)プレゼントを送付している。あり得るのは「特約違反」による追求だが、出版社が主張する「返却」は法的には無理。

(先取特権と第三取得者)
第333条 先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。

当選者とメルカリ購入者の間では既に売買契約が成立しており、所有権は購入者に移っている。この場合、出版社の当選者に対する譲渡契約が取り消されたとしても動産(サイン入りポラロイド)は既に第三者に引き渡されているため、先取特権の行使はできない。出版社側で可能なのは民事訴訟による責任追及くらいだろう。「返却」を強制する法的根拠は存在しない。

出品詐欺の可能性

また、メルカリの出品自体が当選者とは異なる人物による出品詐欺の可能性も否定できない。当選を妬んだファンによる「嫌がらせ」というケースも0ではないだろう。その場合、今回の被害者は当選画像をTwitterに上げただけの当選者となる。現在、アカウントに鍵をかけているのも風評被害を防ぐ目的かもしれない。声優アニメディアは「返信」という晒し上げにもなり得る手法で連絡を試みるのではなく、一企業として淡々と民事訴訟を起こすかメルカリ側に連絡するべきだった。万が一の場合、読者を無関係に巻き込んだ形となり印象は最悪になってしまう。

感想

基本的に転売行為は現在の日本の法律では全く問題がなく、今回の騒ぎもファンの感情論でしかない。当選品を転売するのはファンとしてはあり得ないという主張もよく分かる。購入者も同様で転売ヤーに利益を与えてしまっている。根本的な解決には転売を防ぐ「仕組みづくり」が重要となるが、声優アニメディアの場合は努力が垣間見える。当選通知文面を読むと”プレゼントの裏面には当選者様のお名前等を明記”とあるので、ポラロイドの裏面には名前・住所などの個人情報が書かれているはず。消したり重ね書きした上で転売を行ったのか分からないが、これ以上に転売を防ぐには「サイン」に名前を含める程度しかないのでは。あるいは転売のための労力>利益になるように応募時にファンメッセージを原稿用紙1万字くらい書かせるのも良いだろう。今後の声優アニメディアの対応を見守りたい。


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コメント

  1. ななし より:

    所有権が移ったってとこが断定的過ぎ
    そこの解釈に疑問が残る

    • タコッケー より:

      ななし様、コメントありがとうございます。
      「出版社→当選者」の所有権に関しては当選後に商品が引き渡された時点で贈与契約が成立しており、所有権が移行しています。
      「当選者→購入者」に関しても記事内記載の通り、売買契約成立時点で所有権が移転しています。仮に当選者が未発送で商品を持っていたとしても、当選者が有しているのは占有権のみとなります。
      そもそも「所有権」の定義自体は民法上で明確に定められていないため、過去の判例に則った判断をするしかありません。
      民事で争うにしても「所有権」の主張は過去の判例から考えても難しく、見せしめとして損害賠償請求を行うことしか出来ないと思われます。
      以上、ありがとうございました。

  2. 匿名 より:

    プレゼントではなく貸与にして、一定期間後贈与という形ならある程度の転売対策になるのでは?と素人の考え

    • タコッケー より:

      コメントありがとうございます。
      根本的な解決になれば一考の価値はありますが、結局民事で争う形になる上に懸賞企画としての魅力が下がると思います。
      不利な判例を作るリスクを背負いつつ民事で争うか、検証システムそのものを見直すしかないのでは。
      転売行為自体は経済的な観点で見ればプラスですし「悪」というのはファン心理を踏まえた「倫理」の問題です。
      転売しない、転売ヤーから買わないという当たり前の意識を共有していくしか無さそうですね。
      ありがとうございました。

  3. りょう より:

    この規約の解釈にもよるけど、贈与契約するに当たって「尚、本プレゼントの「オークションへの出品・営利目的での転売等」は、商品をご提供頂きましたメーカー・声優様のご意思に反しますので、厳禁とさせて頂きます。

    「オークションへの出品・営利目的での転売等」が発覚した場合は、ご返却頂きます。」
    上記の条件があり、かつ民法で定められていても任意規定の場合は契約が優先となるので、まず民法333条が強行法規とならない限りは上記の規約契約の条件としては成立するんじゃないですかね?

    一応、釈迦に説法かもしれませんが、強行法規云々に関しては下記の弁護士さんの説明参照で。
    http://www.teraokaikei.com/mm/01_7_20130603.html

    • タコッケー より:

      りょう様、コメントありがとうございます。
      参考になるご意見ありがたいです。
      この場合、懸賞応募時点で「当事者間合意」が取れているかが争点になりそうです。
      今回の件はチケットのダフ屋行為とは異なり、転売側と購入者に力の差があり不良行為が横行する状況でもありません。
      これが「公序良俗違反」にまで該当するかは判例を待つことになりそうですね。
      また、「損害賠償請求」自体は可能ですが「返却」自体を可能とする民法上の理由は無いと思われます。転売時の売上金を請求するのが限界な気がします。
      筆者は法学部出身でもなければ専門家でもないので詳しい説明ありがたいです。
      ありがとうございました。